鉄道大手の2025年3月期の連結業績見通しが15日、出そろった。純利益は大手18社中8社が前期比で増えると見込む。新型コロナウイルス禍前の19年3月期比との比較では11社が上回る。コロナ禍を乗り越え人流が本格的に回復しつつあるのに伴い、各社は抑えていた設備投資に再び資金を振り向けている。
15日に24年3月期決算を発表した近鉄グループホールディングスは、25年3月期の純利益が前期比8%減の440億円になると見込む。運輸や不動産など各セグメントで増収となるが、鉄道部門を中心に賃上げを進めることが利益を圧迫する。
コロナ後で落ち込んでいた人流はほぼコロナ前の水準に戻りつつある。JR東日本や東急など25年3月期通期の収入計画を開示している17社でみると、合計の運輸収入は3%増の5兆4050億円。コロナ前の19年3月期を100%とすると97%まで回復する。
コロナ後のリモートワーク普及などで鉄道の利用形態は変化している。東急の2025年3月期は定期の輸送人員がコロナ初期の2020年3月期比で19%減、収入は13%減だ。一方で定期外の輸送人員は3%増、運賃収入は20%増を見込む。かつての定期利用者の一部が定期外に流れる。
業績がコロナ前水準に戻りつつあるなか、鉄道各社の設備投資意欲が再び強まっている。京浜急行電鉄は24年3月期の鉄道事業の設備投資額が前の期比61%増の249億円だった。25年3月期は過去最高の324億円を計画する。転落を防ぐホームドアや踏み切りを減らす立体交差事業などに充てる。
各社はコロナ禍後の業績落ち込みを受けて財務悪化を防ぐことを優先し、設備投資は安全維持に必要な最小限度に抑えていた。25年3月期の設備投資計画を確認できた14社で集計すると合計投資額は24年3月期に増加に転じ、25年3月期は計画19年3月期実績に比べ3割多い。資材高の影響に加えて積極的な成長投資も目立つ。
京阪ホールディングスは25年3月期に前期の1.9倍となる713億円の設備投資を見込む。「不動産事業では5月に竣工する枚方市の物件や、中之島・淀屋橋の再開発投資が大きい」(松下靖常務取締役)という。
JR西日本は26年3月期まで3年間の成長投資3600億円を400億円積み増す。長谷川一明社長は「広島駅や三ノ宮駅の駅ビル再開発をはじめ、不動産・街づくり投資を拡大する」と語る。
JPモルガン証券の姫野良太氏は各社の設備投資額の増加について「鉄道ビジネスの成長余地に限りがあるなか各社はコロナ前から成長投資をしてきた。コロナ禍で一時的に中断していたが、業績回復で投資に再び舵(かじ)を切れるようになった」とみていた。
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