円安 他国の通貨に対して円の価値が低下している状態。円ドル相場は、ドルを所管するアメリカ中央銀行「連邦準備制度理事会(FRB)」の方針の影響が大きい。FRBが金利引き下げを見送る中、低金利政策を続ける日銀との金利差が縮まらないとの観測から円安が進行。4月29日に34年ぶりに一時1ドル=160円台を付けた。その後に政府・日銀が円買いドル売りの為替介入をしたとみられるが、高金利のドルを買う動きは依然として根強く、円安に歯止めがかかっていない。
◆中東情勢緊迫化に伴う原油の高止まりも影響
物価高で生活は苦しく…
川崎市の飲食店アルバイトの女性(71)は食材や電気代の高騰が悩みだ。時給は4月から100円ほど上がって1200円になったが、「食材がはるかに上がって全然追いつかない」と嘆く。趣味の手芸をやめ、友人との付き合いも最小限にした。「安い食材を探してスーパーを3、4軒回るのが日課」と話した。 試算は家計支出額について、収入別の世帯数を加味して加重平均した。6月に始まる定額減税の影響は含んでいない。 食料品は夏ごろから年度末にかけて円安による輸入品価格が上昇し、4万3000円程度の負担増になるとの見方を示す。エネルギーは政府の電気・ガス料金への補助金打ち切りに加え中東情勢の緊迫化に伴う原油の高止まりなどにより、3万6000円程度支出が増える見通し。このほか物流費の上昇なども影響する。 試算は原油価格が横ばいで、為替相場は年度末にかけ、1ドル=154円から143円へと円安が徐々に和らぐ想定を置いている。担当したみずほリサーチの安川亮太氏は「米国経済や中東情勢によって円安や原油高が想定以上に進む場合は、さらなる負担増になる可能性がある」と指摘する。 現在、5月使用分の東京電力の電気料金は補助が半減し、使用量が平均的な家庭の場合で8538円。補助がなくなる6月はさらに上がって負担が増す見通しで、電力自由化後に東電管内で最も高かった9126円(22年9月〜23年1月)に近づく可能性がある。◆紛争の範囲がどこまで拡大するか
その後はどうか。日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一氏は「為替の動向次第」と話す。為替は、景気が堅調な米国が当面金利を据え置くとの観測から、低金利の日本との差が縮まらないとの見方が強い。ニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「少なくとも夏場まではドル高圧力が強い。貿易赤字など円売りの材料も多く、円高ドル安には進みづらい」とみる。円安が続けば、さらなる負担増につながる懸念が生じる。 原油はイスラエルとイランなどの対立激化が懸念材料だ。調達先の大半はアラブ首長国連邦やサウジアラビアだが、輸送用のタンカーはイランに面するホルムズ海峡を通過することもあり、石油連盟の担当者は「紛争の範囲がどこまで拡大するかによっては、じりじり価格が上昇する可能性もある」と話している。 鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。