「資本的な協力を検討する」。2年連続で1000億円を超える最終赤字を計上したシャープの呉柏勲・社長兼最高経営責任者(CEO)は14日、2024年3月期の決算記者会見で、親会社の台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業と緊密に連携する方針を示した。
16年に鴻海の傘下に入って以降、初めて自己資本比率が10%未満の過小資本になった。24年3月末時点で1574億円の純資産があり、鴻海の強固な財務基盤を考慮すれば経営が傾く水準ではないものの、電機大手の中では見劣りするため資本増強が急がれる。
債務保証や第三者割当増資の引き受けなどを鴻海に要請する可能性がある。
シャープは14日、秋に稼働を停止する堺市のテレビ向けパネル工場の跡地について、データセンターに転用を目指すと発表した。かつて「液晶のシャープ」と呼ばれた同社の経営は大きな転換点を迎える。
半導体事業とスマホ向けカメラモジュール事業を売却する方針も明らかにした。実現すれば、テレビ向けのパネルと合わせて、連結売上高(24年3月期、2兆3219億円)の2割強を占める事業がなくなる。資産売却により運転資金を確保する狙いがある。
大型パネルに携わる人員を対象に希望早期退職を募るほか、中小型も人員を削減する。固定費を削減し、液晶事業の営業損益を24年3月期の832億円の赤字から25年3月期は「赤字幅を大幅に縮小する」(呉氏)。
シャープの業績は液晶事業に左右されてきた。韓国勢や中国勢と投資競争が激しくなるなか、09年にテレビ向けのパネルを生産する堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)を約4300億円を投じて設立した。
日中韓のパネル大手が新工場を相次いで立ち上げた結果、供給過剰を招いた。SDPは12〜16年の経営不振の主因となった。
苦しむシャープに手を差し伸べたのが、液晶で培った「ブランド力」を評価した鴻海だった。台湾流の徹底したコスト削減が寄与して18年3月期以降は黒字が定着、経営は健全化したとの見方も出ていた。
だが、SDPを再び子会社にした22年に潮目が変わった。直近の大型パネルの価格は3年前の高値の半値に下がったが、22年時点でも先行きに不透明感が漂っていた。
鴻海創業者の郭台銘氏の投資会社がシャープを救済する目的でSDP株の過半を一時取得した経緯もあり、22年のシャープの定時株主総会では株主からパネルの市況変動リスクを再び抱え込むことに疑問の声が上がった。
当時の判断の是非を問われた呉氏は「前経営陣が適切なプロセスを経て判断した」と釈明した。
鴻海の経営トップの劉揚偉・董事長は14日のシャープの中期経営方針発表を受けた声明で「(シャープは)デバイス事業のアセットライト化を鴻海と協力して進める方針であり、私もこれを支持している」と強調した。
(坂本佳乃子)
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