オレンジジュース商品の販売休止や値上げの波が広がっている。森永乳業は6月1日出荷分から「サンキスト 100%オレンジ」(200ミリリットル)を10円値上げし130円とするほか、原料がなくなり次第、販売を休止する予定という。他のメーカーでも販売休止が続いているほか、飲食店でも値上げの動きが広がる。オレンジジュースに何が起きているのか。(石川智規)

◆モスではシェイク、カフェラテ同様の「高級」カテゴリーに

モスバーガーの100%オレンジジュースS=モスフードサービス提供

 飲食店では、モスバーガーを展開するモスフードサービスは今月22日から、店舗で販売する「100%オレンジジュース(S)」を40円値上げし、290円とする。ハンバーガーとのセットの場合、今まではアイスウーロン茶などと同様にオレンジジュースは無料で選べたが、22日からはセット価格に加え70円の追加料金が必要となる。セットで追加料金が求められるのはクラムチャウダーなどのスープ類や「モスシェイク」、カフェラテなどと同様。オレンジジュースが今後、高級カテゴリーに位置することになる。

◆価格高騰の要因は…不作と円安のダブルパンチ

2024年6月から10円値上げとなるサンキスト100%オレンジ。原料がなくなり次第、販売休止の予定=森永乳業提供

 「主な輸入先のブラジルで不作が続いて価格が高騰しているほか、最近の円安もあってオレンジ果汁が安く買えない。この2つが要因」。こう説明するのは、日本果汁協会の川村和彦専務理事だ。  オレンジジュースの原料となるオレンジ果汁は、濃縮して冷蔵・冷凍したものを輸入。「冷凍で保存できるので、例年は円高の時に買って在庫をためていた」  ところが、ブラジルでは2021年ごろから不作となったほか、23年にも大雨被害や病害があり、オレンジ果汁の不足が続いているという。  日本果汁協会のまとめによると、オレンジ果汁の輸入単価(1リットル当たり)は2020年に259円だったが、2023年には491円に跳ね上がった。川村さんは「円安のため高くなっている。最近では600円ぐらいの時もあった」と説明する。円安がオレンジジュースを「高嶺(たかね)の花」に押し上げたともいえる。  パイナップルやぶどうなど他の果汁も円安の影響を受けるはずだが、オレンジ果汁は突出して高い状態が続いているという。数あるジュースの中でも、オレンジ果汁は米国やヨーロッパでの需要が根強いのが一因。こうした中、最近では1ドル=160円台まで円安が進み、「日本は俗に言う、買い負けている状態」と川村さんは嘆く。

◆これからどうなる?

 いつになったらオレンジジュースが気軽に飲めるようになるのか。飲料メーカーに聞いたが、「数が確保できず、販売再開は難しい」、「世界的に不足しており見通せない」と悲観的な回答しか得られなかった。  打開策はないのだろうか。たとえば国産みかんを原料に使うことが考えられるが、日本ではみかんにしろりんごにしろ果汁ではなく果物で売ることを前提に生産されている。しかも、「国産果汁産業も高齢化しており、生産量は右肩下がり」(川村さん)。オレンジジュース派には厳しい状況が続きそうだ。 

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