家族のETCカードで料金割引を得た行為は、電子計算機使用詐欺罪に当たるか。この点が問われた刑事裁判で、大阪地裁(末弘陽一裁判長)は8日、カードを使った被告が暴力団組員だった事情を踏まえ、有罪の判決を言い渡した。

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 被告は大阪市内の暴力団組長(67)と同居の弟(62)、車を運転した組員(42)。判決によると、3人は共謀して2022年末、同乗していない弟のETCカードで大阪府内の有料道路を2回走り、高速道路会社をだまして計1400円の割引を受けた。

 判決は、同社やカード会社が名義人以外の使用を禁じていることは規約やカードの裏面で「明確に示している」と指摘。「不正を黙認していた」という弁護側の主張を退け、罪の成立を認めた。

 その上で、刑罰を科すほどの「可罰的違法性」があるかを検討。組長と運転手が弟のカードを「頻繁に使っていた」ことや、ETCカードは暴力団組員には発行されないクレジットカードとひもづける必要があり、暴力団排除条項をかいくぐる点を重視した。

 弁護側が民間会社に委託したアンケートで4割近くが「ETCカードを他人に貸したことがある」と答えたことを踏まえても、可罰的違法性があると結論付けた。

 量刑について、組長は前科を考慮して懲役10カ月の実刑、弟と運転手は懲役10カ月執行猶予3年とした。

 弁護側は「暴力団組員という理由だけで起訴した公訴権の乱用があり起訴は無効だ」とも訴えていたが、判決は、暴力団組織の捜査をする中で容疑が発覚し道路会社が被害届を出した経緯に触れ、「組員という一事をもって起訴したとはいえない」と退けた。(山本逸生)

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