会場建設、どうなっている?
会場となる大阪・此花区の「夢洲(ゆめしま)」では建設作業が本格化しています。
会場のシンボルとなる大屋根リング。
1周およそ2キロ、高さは最大20メートルで、完成すれば世界最大級となる木造建築物となる予定です。
現在、全体の8割ができあがっていて、ことし9月下旬にはリングとしてつながる予定です。
民間パビリオンは、13の企業やグループが出展する予定で、このうち12については、すでに着工しています。
また、「いのち」をテーマに8人のプロデューサーが手がけるパビリオン「テーマ館」はいずれも工事が始まっています。
「海外パビリオン」は間に合うか?
今回の万博には161の国と地域が参加する予定です。
海外パビリオンについては出展の方法は、以下の3つがあります。
タイプA
参加国が独自のデザインをもとに自前でパビリオンを建設する
タイプB
博覧会協会が建設した建物に単独で入居する
タイプC
博覧会協会が建設した建物に複数の国で入居する
このうち、建設の遅れが指摘されてきたのは「タイプA」です。
博覧会協会によると、10日現在、「タイプA」を選択している国は50か国あまりありますが、▽建設会社が決まったのは36か国、▽うち着工したのは14か国です。
残る十数か国は、依然として建設会社が決まっていない状況です。
資材価格の高騰や人手不足に伴う人件費の上昇が背景にあり、各国と建設会社との交渉が難航するケースが相次ぎ、建設の遅れが表面化しました。
政府や博覧会協会は、各国に予算の増額やデザインの簡素化などの対応を求めてきたほか、「タイプX」という、組み立て式の建物を協会が建て、費用を参加国が負担する新たな方式を選択肢として示し、事態の打開を図ってきました。
ただ、準備が遅れる中でも、各国の間ではパビリオンの外観などへのこだわりは強く、実際に「タイプX」への移行を決めたのは3か国にとどまっています。
また、協会が建設する建物に複数の国が入居する「タイプC」に移行した国は4か国となっています。
協会は、準備が遅れている国に対しては、「タイプX」への移行を引き続き提案するなどしていて、開幕までに間に合わせたい考えです。
博覧会協会・石毛博行 事務総長
「まだ建設会社が決まっていない国もあるが、今、まさに最終段階だ。各国は自分たちの事情や予算の制約などを考えながら、現実を直視して決めなければいけない段階に近づきつつある。われわれは各国の予算などをコントロールできないので、そこに寄り添いながらアドバイスをしていく」
チケットは売れている?
博覧会協会は、2300万枚の入場券の販売を目標としていて、このうち1400万枚は前売券として販売する考えです。
前売券の販売は、去年11月末から始まっていて、▽ことし10月6日までに買えば割安に購入できる「超早割一日券」、▽開幕からおよそ3か月の間に1回入場できる「前期券」、▽開幕から2週間の間に1回入場できる「開幕券」などがあります。
協会によると、4月10日の時点で、130万枚あまりの前売券が売れたということです。
このうち、およそ123万枚は「超早割一日券」が占めています。
博覧会協会の幹部は、海外の参加国や民間企業などが今後、具体的な展示内容を発表したり、パビリオンの予約が始まったりすれば、前売券の販売が伸びることに期待を示していました。
万博への関心は?
NHKが4月に行った世論調査で、大阪・関西万博に関心があるか尋ねたところ、
▽「とても関心がある」 … 7%
▽「ある程度関心がある」…24%
▽「あまり関心がない」 …35%
▽「まったく関心がない」…27%
でした。
全国的な関心の高まりが課題となっています。
このため博覧会協会は、首都圏をはじめ全国各地で、今後、PR活動を強化していく方針で、協会には万博の意義そのものに加え、パビリオンでの展示内容や開催中に開かれるイベントなどについて丁寧な説明が求められることになりそうです。
会場への交通手段は?
夢洲にある会場には、多い日で1日22万人あまりの来場者が見込まれています。
その会場へのアクセスは、▽大阪メトロ中央線で夢洲駅に乗り入れるルートや▽JR桜島駅からシャトルバスに乗り継ぐルートなどが主要なルートとして設定されています。
しかし、シャトルバスは、人手不足の深刻化を背景にバスの運転手確保が課題となっていて、必要とされる180人のうちおよそ100人が不足しているということです。
博覧会協会は、大阪メトロ中央線の混雑を防ぐため、シャトルバスの価格を350円に設定し、バス事業者の採算を確保するため運行費用の一部を負担することにしています。
このほか、▽自転車でも来場できるようサイクルラインを設定するほか、▽船舶を使った水上交通も具体化に向けて調整を進めています。
ボランティアやスタッフは足りる?
博覧会協会は、会場内での来場者の案内や施設の運営をサポートするボランティアを1万人、大阪府と大阪市は、主要な駅や空港で案内などを行うボランティアを1万人、募集しています。
協会によりますと、4月5日時点で、あわせて1万5027人の応募があるということです。
募集はいずれも4月末までです。
協会などは「万博での経験は貴重ですばらしいものがあるのでぜひ参加してもらいたい」と呼びかけています。
また、入退場ゲートでの対応や会場内の巡回などを担当する給与が支払われるスタッフの募集は、13日から始まります。
募集人数は、▽週に5日ほどフルタイムで働く「コアクルー」と▽週に1日以上働く「サポートクルー」あわせておよそ600人で、遠方に住む「コアクルー」には宿舎も用意することになっています。
これ以上、費用は増えない?
大阪・関西万博の会場建設費は、これまでに2度「上振れ」しています。
誘致当初の計画では、1250億円。
ところが、2020年、来場者の暑さ対策や「大屋根」の設計変更などを理由に1850億円に引き上げられました。
そして、去年、資材価格や人件費の高騰などを理由に、最大2350億円に引き上げられました。
会場建設費は▽国、▽大阪府・市、それに▽経済界の3者が、3分の1ずつ負担する仕組みになっています。
このうち国は、会場建設費とは別に政府が出展するパビリオンの建設費などを負担することになっています。
また、運営費も、人件費や会場外での雑踏対策の費用が膨らんだことなどから、当初の想定から4割あまり多い1160億円にのぼるとしています。
「さらに費用がかさむのではないか」という懸念の声が上がるなか、政府は費用が適正かどうか、検証や点検をするため、公認会計士や弁護士などの有識者を集めた万博の予算監視委員会を設置し、ことし1月に初会合を開きました。
また、博覧会協会も、運営費の執行状況を管理する「運営費執行管理会議」を立ち上げ、3月、初めてとなる会議が開かれました。
予算を管理する最高財務責任者=CFOは財務省出身の副事務総長が務めることになっていて、全体の費用がさらに膨らまないよう管理を徹底することにしています。
建設工事や運営をめぐり懸念の声も
大阪・関西万博を巡っては、自前でパビリオンを建設する国の一部から、建設工事や開幕後のパビリオンの運営をめぐって、懸念の声も上がっています。
オーストラリアの政府代表 ナンシー・ゴードン氏
「万博に限ったことではなく、国際イベントで価格高騰の問題に直面している。予算内におさめるため、パビリオンの機能性を失わせることなく、慎重に変更を加えた」
また、開幕までに間に合うか懸念を示す国もあります。
チェコ政府代表 オンドジェイ・ソシュカ氏
「チェコの建設計画は規模も大きく、およそ400日後の開幕に間に合わせるのはとても難しい状況だ。およそ50か国が同じような時期に独自のパビリオンを建てることになり、開幕までに間に合うかは博覧会協会にとっても大きな挑戦だろう」(3月初めに建設現場を見学した際の発言)
万博開幕後のパビリオン運営についても懸念を示す国があり、NHKの取材ではポルトガルやスイス、オーストリアは、パビリオンの日本人スタッフを確保できるか懸念を示していました。
また、国際情勢も各国の出展に影響しています。
中東のイスラエルはもともとタイプAでの出展を想定していましたが、博覧会協会が準備する建物で複数の国が展示を行う「タイプC」という方式で出展すること決め、3月、日本政府に通知しました。
イスラエル大使館によりますと、イスラム組織ハマスとの戦闘によって予算や資源が国防に費やされるなか、「タイプC」に決めたということです。
さらにロシアは、去年11月にフランスで開かれたBIE=博覧会国際事務局の総会で「主催者とのコミュニケーションが十分にとれない」などとして万博に参加しないことを明らかにしました。
ロシアによるウクライナ侵攻をめぐる日本や欧米の姿勢に反発した可能性が指摘されています。
ロシアについて、日本政府は、命の大切さなどをテーマにした趣旨にそぐわず、万博参加は想定していないとの見解を示しています。
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