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コロナ後遺症の患者 複数の医療機関を転々と…
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コロナ後遺症外来 患者から診療依頼が数多く
新型コロナの後遺症について、WHO=世界保健機関は倦怠感や集中力低下などが少なくとも2か月以上続き、ほかの病気の症状として説明がつかないものなどと定義していますが、詳しい原因はわからず治療法も確立していません。
国の研究班が去年公表した調査報告では、3つの自治体で新型コロナに感染した成人の1割から2割余りが「倦怠感などの症状が2か月以上続いた」と回答しています。
新型コロナの5類移行後も続けられてきた、治療薬の補助やワクチンの無料接種などの特例的な支援はことし3月いっぱいで廃止され、通常の医療体制の中で対応する扱いになりました。
しかし依然として、コロナ後遺症外来を設置している医療機関には、現在も全国から相談が数多く寄せられていて、症状が長く続いて学校や仕事に行けなくなるなど深刻な影響が出ています。
厚生労働省は、後遺症の診療にあたる医療機関のリストを公開するよう自治体に呼びかけるとともに、後遺症の原因解明や治療法の開発に向けた研究も進めることにしています。
コロナ後遺症の患者 複数の医療機関を転々と…
コロナ後遺症の患者の中には、重い症状が続く一方で、医療機関で後遺症に関する説明や治療を十分に受けられず、複数の医療機関を転々と受診した人もいます。
青森市の窪田梨絵さん(36)は、2023年8月に新型コロナに感染して以降、およそ9か月がたった現在も発熱や身体の痛みなどの症状が続いています。
窪田さんは症状が続いてすぐに後遺症に対応する医療機関で検査を受けましたが、異常は確認されず、処方された解熱剤を飲んでも熱が下がりませんでした。
医師に別の治療法がないか尋ねましたが、詳しい説明はなかったといいます。
その後、自分で情報を集めて医療機関を転々とし、5か所目でコロナ後遺症と診断を受けて継続的な治療を受けられるようになりました。
窪田さんはコロナ感染前は広告デザインの仕事をしていましたが、起き上がることも難しい状態が続き、去年9月に退職しました。
現在は、青森市内の病院で治療を続け、症状は徐々に改善していますが、傷病手当金や失業給付の給付期間が終了し収入が無い状態になっていて、今後、後遺症が治って元の生活を取り戻せるのか、不安が尽きないといいます。
窪田さんは「後遺症について丁寧な説明はなく、『解熱剤を出すしかない』と言われたので、治療が打ち切られたと感じました。自分で血眼になって情報を集めるしかなく、同じように悩んでいる患者は多いと思うので、どこの病院でも安心して治療が受けられるようになってほしいです」と話していました。
そのうえで、「やりがいをもって続けていた仕事も辞めざるを得ず、つらく、悔しく、将来への不安がすごくあります。誰がこのような状況になってもおかしくないと思うし、5類になってもコロナ自体が無くなったわけではないので、ひと事のようには考えないでほしいです」と話していました。
コロナ後遺症外来 患者から診療依頼が数多く
コロナ後遺症外来を設置しているクリニックには、患者からの診療の依頼が数多く寄せられています。
東京 渋谷区の「ヒラハタクリニック」はコロナ後遺症の外来を設置しています。
院長の平畑光一医師によりますと、後遺症の診療を希望する患者からの相談は全国から来ているということで、取材に訪れた先月22日には、受付開始から10分間で40件近くのオンライン診療の予約が入りました。
クリニックでは、症状に応じた薬を処方したり、運動療法や呼吸法の指導を行ったりしていて、多くの患者はこうした治療やケアで症状が改善する傾向にあるということです。
一方で平畑医師は、コロナ後遺症の患者に対応できる医療機関がまだ限られていると感じています。
患者の中には、地元の医療機関でコロナ後遺症かどうか判断できないと言われたり、コロナ後遺症と診断されても「治療法はない」と言われたりして、ヒラハタクリニックに相談に来る人が少なくないということです。
この日受診した東京 立川市の50代の女性は、2年前に新型コロナに感染後、息苦しさなどが続いて自宅近くの病院を受診しましたが症状が改善せず、知人の勧めでこのクリニックに通い始めました。
女性は「当初は呼吸するのも難しい状態でしたが、自宅近くの病院で『ちょっと運動すれば治るのではないか』と言われ、辛さを理解してもらえませんでした。丁寧にみてもらえる医療機関が近くにあればいいなと思います」と話していました。
平畑医師は「今も北海道や沖縄からも患者が訪れていて、後遺症を継続的に治療できる医療機関はまだまだ少ないと感じている。診察した患者の7割近くで失職や休職など、仕事の継続に影響が出ていて、後遺症の影響は深刻だ。後遺症に対応できる医療機関を増やす対策を行ってほしい」と話していました。
専門家「行政は医療機関と連携し情報提供の強化を」
政府の委員として新型コロナウイルス対策にあたり、現在は厚生労働省が医療機関向けに作成しているコロナ後遺症に関する「診療の手引き」で編集委員の代表を務める、川崎市健康安全研究所の岡部信彦参与は「いわゆるコロナ後遺症でみられるような症状を専門的に診療できる医師は少ないのが現状だ。特定の専門家のところに患者が集中するのではなく、まずは地域の医療機関やかかりつけ医でしっかりと相談でき、症状が長引いたり、さらに検査が必要になったりした場合に専門的な医療機関へつないでいくような体制が求められる」と話していました。
そのうえで「コロナ後遺症は新しい病気による症状で情報が限られている。地域の医療機関で対応するためには、こうした医師などを対象に、自治体や医師会、学会などの単位で研修会を行ったり、情報交換をする機会を今後も作っていくことが求められる。患者が相談できるよう、行政は医療機関と連携して、コロナ後遺症について情報提供する取り組みを強化していくことも必要だ」と話していました。
そのうえで「最新の研究では、多くの患者で、時間がたてば徐々に症状が改善することもわかってきているので、患者も医療側も前向きに、粘り強く対応していく必要がある」と話していました。
新型コロナ 感染状況は
新型コロナが5類に移行されたことに伴い、感染者数はそれまでの「全数把握」から、週1回、全国およそ5000の医療機関に新規感染者数を報告してもらう「定点把握」に変更されました。
1つの医療機関あたりの平均の患者数でみると、去年5月以降は増加を続け、9月3日までの1週間の患者数は20.5人と、5類に移行後、最も多くなりました。
その後、感染者数は減少していましたが、去年11月から再び増加に転じ、ことし2月4日までの1週間では16.15人になりました。
その後は現在まで減少傾向が続いていて、最新の人数は4月28日までの1週間で3.22人となっています。
流行株としては去年12月以降、オミクロン株の一種の「JN.1」と呼ばれる変異ウイルスが日本でも広がり、3月末時点では主流になっています。
5類に移行後の感染状況について、川崎市健康安全研究所の岡部信彦参与は「この1年間の感染状況を見ると以前と比べて明らかに重症化する割合は少なくなっていて、病床がパンクする状況ではない。ただ、一部で重症化してしまう人はいて、インフルエンザと比べて流行シーズンが終わっても居座るような病気だ。人々が注意しなくなると感染者数が増えるので、一定の感染対策は引き続き必要だ」と指摘していました。
【詳しく】支援策や後遺症への対策 どのように変わったのか
新型コロナが法律上の5類に移行されて1年がたち、コロナの支援策や後遺症への対策はどのように変わったのか、詳しくまとめました
コロナ治療薬
高額なコロナ治療薬の費用については、ことし3月までは公費負担があり薬の種類にかかわらず最大で9000円の自己負担で利用できていましたが、4月からは公費負担が終了し、自己負担額が上がりました。
自己負担額は薬の価格によって変わり、例えば「ゾコーバ」では、5日分の薬が処方されが場合、薬の価格がおよそ5万2000円のため、医療費の自己負担割合が、1割の場合はおよそ5200円、2割の場合はおよそ1万300円、3割の場合はおよそ1万5500円の自己負担が求められます。
メーカーの塩野義製薬が治験を行った結果、新型コロナに感染して「ゾコーバ」を服用した人は、半年後に後遺症とみられる症状が出るリスクが半分ほどに下がったと発表しています。
ワクチン
新型コロナワクチンの接種は、3月までは無料で受けられましたが、4月からは、季節性インフルエンザなどと同様に、原則費用の一部自己負担を求める「定期接種」で行われます。
接種費用の自己負担額は最大でおよそ7000円で、65歳以上の高齢者と、60歳から64歳で基礎疾患がある重症化リスクの高い人を対象に年に1回、秋から冬の間に行われます。
これ以外の人は「任意接種」となり、自己負担額は7000円を超える見通しです。
入院医療費
重症化のリスクがある場合などに入院して治療を受けると3月までは「高額療養費制度」を適用したうえで、さらに最大1万円が補助されてきましたが、4月からはこの補助がなくなりました。
厚生労働省の試算では、住民税非課税世帯ではなく、年収がおよそ370万円までの75歳以上の高齢者が、新型コロナで7日間入院した場合、コロナ治療薬の費用を除く自己負担額は所得に応じて3万9800円から5万7600円となるほか、食事代が別でかかります。
後遺症対策
コロナが法律上の5類に移行された去年5月8日から後遺症の患者を診療した医療機関に支払われる診療報酬が特例的に加算されていましたが、この加算については、今年度の診療報酬改定で終了することが決まっています。
改定後は、コロナを含む感染症の後遺症が疑われる場合に精密な検査ができる体制を整えているかや、定められた感染症対策をとっているかなど、複数の条件に適合した診療所に対して報酬が加算されます。
また、後遺症の詳しい症状や、原因の解明、治療法の開発などに向けた研究は今年度も継続して行われます。
コロナ後遺症の支援制度
後遺症の影響で休職する場合などに給付の対象となる主な支援制度は以下の通りです。
《労災保険》
仕事や通勤が原因で新型コロナに感染し、その後遺症で療養が必要などと認められる場合には、労災保険の給付の対象になります。
詳しくは職場のある地域を管轄する労働基準監督署に相談してください。
《健康保険》
仕事や通勤以外の原因で新型コロナに感染し、仕事をすることが困難になった場合、仕事に就くことができなかった期間などの要件を満たせば健康保険制度を活用して傷病手当金が支給されます。
支給を受ける要件や申請の手続きなどについては加入している健康保険組合などに相談してください。
《障害年金》
後遺症によって日常生活が著しく制限を受けるなどしている場合、法令で定められた障害の程度などの要件を満たせば、障害年金の対象となります。
地域の年金事務所のほか、相談窓口に電話で問い合わせることができます。
番号は0570-05-1165です。
《身体障害者手帳》
後遺症の症状によって視覚や聴覚、声などに障害のある状態になった場合は、要件を満たせば身体障害者手帳が交付されます。
申請方法など詳しい情報は各地の市区町村の担当部署に相談してください。
《精神障害者保健福祉手帳》
後遺症によって一定程度の精神障害の状態にあると認定された場合は、要件を満たせば精神障害者保健福祉手帳が交付されます。
申請方法など詳しい情報は各地の市区町村の担当部署に相談してください。
《生活困窮者自立支援制度》
就労や住まいなどに関する生活の困りごとに対しては、地域の自立相談支援機関が相談に応じています。
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