これまでの議論を整理した報告書の案によりますと、このうち、将来的に基礎年金を底上げするため、物価や賃金の上昇率よりも給付水準を低く抑える期間を短縮する案については「基礎年金が将来にわたって一定の給付水準を確保することの重要性は意見がおおむね一致した」としています。

一方、この案では、比較的、財政が安定している厚生年金保険料の積立金を活用するため、過去30年間と同じ程度の経済状況が続いた場合、厚生年金の受給者は、現行制度に比べて一時的に給付水準が下がることなどから、慎重な意見も多かったと指摘しています。

このため、経済が好調に推移しない場合の備えとして位置づけ、さらに検討を深めるべきだとしています。

また、この案を実施する場合、追加の国庫負担が年間1兆円から2兆円程度必要になる見込みとなっていて、報告書の案では、安定した財源の確保も論点だとしています。

厚生労働省は、こうした内容を踏まえ、与党などと具体的な制度について協議し、来年の通常国会に必要な法案を提出したいとしています。

年金制度改革 残る論点は

年金制度改革では、このほかにも論点が残っています。

【在職老齢年金制度】

65歳以上の人が働くことで一定の収入を得ると厚生年金が減額される「在職老齢年金制度」について、厚生労働省は、高齢者の働く意欲をそがないよう制度を見直し、年金が減額される基準を現在の月額50万円を上回る場合から引き上げる方向で検討しています。

ただ、具体的な引き上げの額は決まっておらず、年明け以降、与党などの意見を踏まえ、決定する見通しです。

【標準報酬月額】

また、厚生労働省は、将来にわたる給付水準を安定させるため、収入の多い厚生年金の加入者には、より多くの保険料を負担してもらう必要があるとして保険料の算定のもととなる「標準報酬月額」の上限を引き上げる方針です。

これについても、どの程度、引き上げるのかは決まっておらず、今後、調整が本格化する見通しです。

【保険料負担の特例案】

これに加え、厚生労働省は、パートなどで働く人が厚生年金に加入できる
▽「年収106万円の壁」と呼ばれる賃金要件や
▽従業員51人以上としている企業規模要件を撤廃するとしています。

さらに、5人以上の従業員がいる個人事業所は、すべての業種で厚生年金の加入対象とする方針です。

これにあわせて、保険料負担が生じることによる働き控え対策として、労使折半となっている保険料を企業側がより多く負担できるようにする特例を設ける案を示していますが「企業間の待遇格差を助長するリスクがある」など慎重な意見もあり、厚生労働省は、引き続き、検討を進めることにしています。

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