自社のクラウドサービスからの乗り換えを妨害したとして、公正取引委員会は24日、三菱商事子会社のMCデータプラス(東京・渋谷)に独占禁止法違反(不公正な取引方法)で行為の取りやめと再発防止を求める排除措置命令を出した。クラウドサービスを巡って公取委が行政処分を出すのは初めて。

MC社はゼネコンや建設会社向けに工事現場の作業員の名前や連絡先などの情報をクラウド上で管理し、労務安全書類の作成や提出ができる「グリーンサイト」を提供している。

公取委によると、同社は遅くとも2020年ごろから顧客企業から登録した作業員情報の提供を求められても、個人情報の保護を理由に要請に応じなかった。作業員名簿などの労務安全書類をPDFなどで出力することはできたものの、顧客企業が作業員の登録時に入力した元データは取り出せない仕様になっていた。

サービスを使うには作業員1人あたり最大100項目以上を入力する必要があり、データが取り出せないと料金体系の異なる他社サービスへの乗り換えに労力を要する。同時期に参入した競合サービスへの移行を妨げる狙いがあったとみている。

競合他社に直接働きかけるなどして顧客企業と競合他社の取引を妨害した行為も確認された。19年にはMC社のサービスから出力したデータを他社に提供するのを一律で禁止するよう規約を改定していた。その後も情報の目的外利用を禁止する条項を加えるなどした。

同社からのデータ移行の方法をホームページで公開していた競合他社に対し、記事を削除するよう求めていたほか、サービス乗り換えのため出力したデータを他社に持ち出す行為は規約に反すると顧客企業に注意喚起していた事例も確認された。

建設業向けの同種サービスは約50億円の市場規模があり、同社のシェアは7〜8割とされる。独禁法は競争関係にある他の事業者の取引を不当に妨害する行為を「取引妨害」として禁じている。

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