警察庁や金融庁などは外国人名義の口座管理を強化する。在留期限を過ぎた留学生や技能実習生らの口座が売買され、SNS型投資詐欺といった犯罪収益の受け皿として悪用されるケースが目立つためだ。金融機関に対して、在留期限後の入出金の制限を徹底するよう求める。深刻な詐欺被害の抑止に向け犯罪ツールの流通を止める。
「口座買い取ります」。SNSには銀行口座の買い取りを示唆する投稿があふれる。応募者とは秘匿性の高い通信アプリを通じて売買するグループが多い。口座売買は犯罪収益移転防止法に違反し警察も取り締まりを強めているが、いたちごっこが続いている。
特に犯罪への悪用が目立つのが外国人名義の口座だ。警察庁によると、2021年に起きたインターネットバンキングの不正送金事件で、一次送金先の口座のうち69%が外国籍名義だった。国別ではベトナムが29%で最も多く、中国が6%だった。
摘発例によると、留学や技能実習で来日した外国人が在留期限を迎え帰国する際に、SNSやブローカーを通じて口座を売却するケースが多い。警察幹部は「帰国する外国人は違法行為に及ぶ心理的なハードルが下がっている可能性がある」とみる。
犯罪収益移転防止法は在留期限が過ぎた外国人の口座での入出金について、第三者が関与した「なりすましが疑われる取引」に該当しうると定める。金融機関は口座利用を制限する必要があるが、どの時点から同取引に該当するか明示されていなかった。
このため利用の制限を巡る対応は金融機関の間でばらつきがあったという。捜査関係者は「対策が緩い銀行の口座は高値で取引されるケースもあった」と話す。
警察庁は24日に金融庁など関係省庁に出した事務連絡で、在留期限の翌日以降の入出金は「なりすましによる取引が疑われる」との解釈を示した。在留期限を迎えた外国人は既に出国したと想定され、本人による取引の可能性は低いと判断した。
事務連絡は業界団体を通じ各金融機関に周知する。金融機関は在留期限が過ぎた外国人の口座について、期限の更新が確認できるまで利用を制限する。銀行関係者は「利用制限の強化に向け、法令解釈が明示されたことで顧客に対して根拠を持った説明ができる」と話した。
口座管理を強化する背景には詐欺被害の増加がある。警察庁によると、SNS型投資詐欺とロマンス詐欺の24年1〜11月の被害額は計約1141億円に上った。特殊詐欺の同被害額は581億2千万円(暫定値)に上り、通年でも過去最悪を更新した。
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