ことし1月の事故では、海上保安庁の航空機と日本航空の旅客機が衝突して炎上し、羽田にある国直轄の空港消防と東京消防庁が消火活動にあたりましたが、双方の機体が全焼しました。

今回の日本航空の機体、エアバスA350型機は、炭素繊維を使った複合材が多くの部分に使用された新型のもので、こうした旅客機が全焼した初めてのケースでした。

国土交通省によりますと、炭素繊維が使われた機体は燃えにくいものの、燃えた場合は多くの粉じんが出るほか火が消えにくいとみられるということで、事故後に映像などを確認したところ燃え方が事前の情報と一致したため、大量の粉じんが発生した可能性が高いと判断したということです。

さらに、消火活動にあたった空港消防の隊員12人に聞き取り調査を行ったところ、4人が活動後に頭痛やのどの痛みといった症状が出たと訴えたということです。

頭痛などの症状と炭素繊維との関係は分かっていません。

こうしたことを受け、
▽各地の空港では顔をマスクで覆い、背負ったボンベから送られてくる空気を吸う空気呼吸器の運用が始まっているほか、
▽国土交通省は今後、全国の空港で活動する消防の内部規定に航空機の消火にあたる際は空気呼吸器の装着を推奨するという内容を盛り込む方針です。

今後、炭素繊維が使われた機体が主流になるのに対応するねらいがあるということです。

各地の空港には機体の中に入って救助活動をするときのための空気呼吸器がすでに配備されていますが、使用できる時間が15分ほどと短いため、内部規定を改めるのにあわせて30分以上使える大型の呼吸器の配備を検討しています。

炭素繊維を使った機体 特徴は

国土交通省によりますと、新型の機体としてつくられたエアバスA350型機とボーイング787型機では、旅客機では初めて炭素繊維を使った複合材が胴体、主翼、尾翼などの機体の表面とそれを支える構造物のほとんどで使用されているということです。

従来はアルミ合金が使われていました。

航空会社からの情報では、複合材を使った機体は軽量化されて燃費が大幅に向上したほか、耐火性能が高いという特徴もあるということです。

一方、燃えた場合は多くの粉じんが出るという情報があるほか、国土交通省の分析では火が消えにくい性質があるとみられるということです。

日本航空はエアバスA350型機を2019年から導入し現在15機保有していて、燃費は従来よりおよそ25%向上したということです。

ANAホールディングスはボーイング787型機を2011年から導入し現在87機保有していて、燃費は従来よりおよそ20%向上したということです。

空気呼吸器を装着した訓練始まる

長崎県大村市には、空港で活動する消防のための国土交通省の訓練施設「空港保安防災教育訓練センター」があり、ことし7月から空気呼吸器を装着して行う訓練が始まっています。

この訓練施設では実物大の航空機の模型を使った訓練が行われていて、空気呼吸器を使った訓練には全国の空港で活動する消防隊員、およそ1500人のうち、これまでに200人ほどが参加したということです。

今月5日の訓練には羽田や関西、女満別など7つの空港の1年目から4年目の隊員9人が参加しました。

訓練は左側のエンジンと車輪から火災が発生したという想定で行われ、施設にあるボーイング767型機の模型に実際に火がつけられ、消防車3台が出動しました。

現場に到着すると、隊員たちは防火服の上から空気呼吸器を背負ってマスクで顔を覆い、すぐに消火にあたっていました。

防火服の重さは10キロ以上になり、着ると動きづらいため、空気呼吸器を装着する訓練は何度も行う必要があるということです。

訓練のあと教官は隊員に対し「呼吸が荒く、ボンベの空気の減り方が早かった。自分の呼吸法が分かってくれば活動時間が伸び、安全の確保や救助できる時間を増やすことができる」などと指摘していました。

教育訓練センターの淵田良樹空港保安防災指導官は「有毒ガスや煙、炭素繊維から消防隊員の安全を確保しなければいけない。消防隊員がけがをしたりすると、そもそも旅客を救助することができなくなる。そういった意味でも空気呼吸器を必須化させていくことが重要だ」と話していました。

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