成田空港の防災訓練で、負傷した外国人旅客役の男性を手当てするセコムの救命士警備員(右)=2024年9月

 広い成田空港で、急な傷病者が生じた際に素早く救護措置を施せるようにするため、警備大手セコムは、救急救命士の国家資格を持つ「二刀流」警備員の配置を始めた。同社の担当者は「国内の空港では初の取り組み。迅速で的確な初動を心がけたい」と話す。(共同通信=髭敬)

 9月上旬、震度6強の地震を想定して行われた、空港の防災訓練。「救急救命士有資格者」の腕章を着けた男性警備員が、ターミナル内で転倒し骨盤を折った外国人旅客役の男性へ駆け寄った。呼吸や脈拍などを確認してストレッチャーに乗せ、離れた場所にいた医師や救急隊員の元へ搬送。容体を説明し、手当てを引き継いだ。

 成田国際空港会社(NAA)から業務を受託するセコムは2024年4月から、救命士の男性警備員4人を第1、第2ターミナルで勤務させている。血圧計や血中酸素濃度を計測するパルスオキシメーターなどが入った救護バッグを、空港内の複数の場所に配備した。

 飛行中の航空機内と地上との気圧変化で体調を崩した人や、段差で転倒し出血したりした人ら、10月末までに計約110人を手当てした。救命士警備員の1人、匹田英瑠さん(26)は「責任重大だが、安心感を与えられる仕事」とやりがいを語る。

 「警備と命は密接不可分」との理念で、セコムは2017年から、救命士資格を持つ人材の採用に力を入れ始めた。2024年11月中旬時点で有資格者の警備員は計約30人。成田空港の他には、公共施設や、通報を受けて指令を出す部署に配属されている。他の空港への投入は「成田での実績を踏まえて慎重に判断する」(コーポレート広報部)としている。

 NAAによると、2023年は約630人の急患が生じた。保安部門を統括する八重樫彰さん(43)は「救命士警備員の存在は心強い」と語る。

救護バッグを持つセコム救命士警備員の匹田英瑠さん(右)
救護バッグの中身を説明するセコム救命士警備員の匹田英瑠さん
成田空港に複数配備されている救護バッグ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。