再審の制度は、通常の刑事裁判とは違って審理の進め方などが具体的に定められていないため、審理が長期化し、えん罪を晴らす妨げになっているとの指摘も出ていて、法務省の有識者会議で、今後のあり方をめぐって協議が続けられてきました。
こうした中、法務省は、最初の申し立てから40年余りを経て、無罪が確定した袴田巌さんの再審をきっかけに、制度の見直しを求める声が強まっていることも念頭に、着実に対応していく必要があるとして、法改正の議論を始める方向で、調整しています。
早ければ来年の春にも、法務大臣の諮問機関である法制審議会に検討を諮問したい考えです。
これまでの有識者会議の協議を踏まえ、諮る内容の具体化を進めることにしています。
再審制度をめぐっては、日弁連=日本弁護士連合会が
▽通常の裁判と同じように「証拠の開示」に関する具体的な規定を設けることや
▽裁判所が再審を認めた場合には、検察による不服の申し立て「抗告」を禁止することなどを訴えていて、今後の法改正の議論でも論点となりそうです。
再審手続き 長期化が課題
再審の手続きをめぐっては、申し立てから再審開始が認められるまで数十年かかるケースが相次ぎ、長期化が課題となっています。
58年前、静岡県で一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、その後再審で無罪となった袴田巌さん(88)のケースでは、最初の申し立てから再審開始が確定するまでに42年かかり、袴田さんは長期間収容された影響で十分な意思疎通ができない状態です。
死刑が確定したあと再審で無罪となったのは袴田さんを含めて戦後5人いますが、いずれも申し立てから再審開始が決まるまでに20年以上かかっています。
1986年に中学3年の女子生徒が福井市の自宅で殺害された事件では、前川彰司さん(59)が殺人の罪で懲役7年の判決を受けましたが、ことし10月、名古屋高裁金沢支部が再審を認める決定を出し、来年3月にもやり直しの裁判が開かれ、無罪となる公算が大きくなっています。
このケースでも最初に再審を求めてから20年かかっています。
これらの状況について審理に長い年月がかかり、えん罪被害者の早期の救済を妨げているという声もあがっていて、超党派の国会議員による議員連盟も法改正に向けた議論を続けています。
議員連盟は、過去の著名な再審事件で検察の証拠開示が不十分で著しく遅かったことや、再審に関する手続きの規定が法律上ほとんどないこと、それに、検察官の不服申し立てによる手続きの長期化などを課題として議論しています。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。