目次
-
(1)政策活動費を廃止する法案
-
(2)第三者機関を国会に設置する法案
(1)政策活動費を廃止する法案
政策活動費を廃止する法案について、政治資金の問題に詳しい日本大学の岩井奉信名誉教授は、「支出の行方がわからないで済むこれまでの政策活動費のあり方は認められるわけがなく、全廃は当然の結果だ。ただ、以前から批判があったこうした支出を認めないとなったことは、政治資金の透明化という点では一歩前進と言える」と話しました。
政治過程論が専門で神奈川大学の大川千寿教授は、「国会会期末が見え始めた中で、政党間の妥協が急がれた側面は否めないが、政治家個人への寄付禁止の例外となっていた政策活動費の全廃は、透明性などの意味では前進だ。与野党を超えた幅広い合意が必要な争点について主要な政党が協議し、法案が成立する見通しになったことも一定の評価ができる」と話しました。
(2)第三者機関を国会に設置する法案
政治資金をチェックする第三者機関を国会に設置する法案について、岩井名誉教授は、「透明性の確保とチェックの仕組みがなかったことが一連の不祥事の最大の問題で、日本でも欧米各国のような政治資金を管理監督する機関の必要性を認めていくのは当然だが、対象が国会議員に限られ、権限も弱く、これでは意味がない。第三者機関を作りましたというアリバイのためのものにすぎない」と指摘しました。
そのうえで、「非常に甘いものが提案され、断片的で場当たり的な議論が行われているが、拙速に過ぎるし、情緒的に決めるような問題ではない。われわれが求めていたような強い独立性と権限を持った第三者機関を作るには、きっちりとした議論と精査が必要なので、時間をかけて制度全体を抜本的に見直していく視点が必要だと思う」と話しました。
大川教授は、「政治資金の収支報告に対する事後チェックが非常に甘いことが、政治家などの政治資金の取り扱いの緩さを招いている側面があったので、一定のチェックが入ることへの期待はあるが、国会の中といういわば身内に設置されることになるので、第三者性をどう確保するかがポイントになる」と指摘しました。
そのうえで、「国会議員の関係団体だけでも相当な数があるので、その収支報告書をしっかり精査し分析する能力のある体制、実効性のある形を築けるかが、今後の課題になる。今回の改正は、さまざまな法案を寄せ集める形になるため政治資金規正法としての整合性をどのようにとり、より透明性を確保するための具体的な制度設計をどうするかがこれからの課題だ」と話しました。
(3)企業・団体献金禁止の議論 先送り
企業・団体献金の禁止を盛り込んだ法案の議論が先送りされたことについて、岩井名誉教授は、「来年3月までに与野党で合意するとしているが、企業・団体献金の9割を受け取っている自民党にとってこれは収入の生命線で、野党の間でも意見が合わないので、難しいのではないか」と述べました。
そのうえで、「政治資金というのは民主主義にとってそれなりに必要なもので、諸外国を見ると、企業・団体献金を禁止している国も容認している国もある。私は、企業・団体といえども国家や社会を構成する一員なので、厳しい制約をつけた上で献金を認めてもいいと思うが、政党支部に対する企業・団体献金は、事実上、政治家個人への企業献金なので認めるべきではない。政治とカネの根本に関わる問題なので、議論を尽くしたうえで、国民の納得を得て成案を得るため、外部の審議会などで議論してもらうほうがいい」と話していました。
大川教授は、「企業・団体献金に収入の一定割合を依存する自民党は、与野党間だけではなく、与党内、野党内でもそれぞれ意見が分かれているという状況で、性急な結論を避けたいという思惑が強かったのではないか」と述べました。
そのうえで、「日本の民主主義の健全な発展を促す観点からも、企業の政治活動の自由と、企業・団体献金が政治や政策をゆがめてないかという点を吟味すべきだ。それには議席や得票の多い政党に多く配分される形になっている政党交付金の制度とのバランスも考えていく必要があり、通常国会で議論が深まり生産的な結論が見いだされることに期待したい」と話していました。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。