泉鏡花の幻想小説「山海評判記」が掲載された昭和初期の新聞を展示する企画展が、泉鏡花記念館(金沢市下新町)で開かれている。同館によると、舞台となった能登地域・和倉温泉や輪島の風景が感じられる作品といい、掲載紙の挿絵も楽しめる。

 同作は、主人公の小説家・矢野誓(ちかう)が怪異の数々に遭遇する物語。1929(昭和4)年7月2日から11月26日まで「時事新報」の夕刊に125回にわたって連載された。今回は新聞の現物12枚や草稿を展示している。

 鏡花は連載前、主な舞台である和倉温泉(七尾市)を取材に訪れたという。穴倉玉日(たまき)・学芸員は「鏡花の感じた能登の魅力が作品に反映されている」という。「地形の険しさ、それ故の景色の素晴らしさが強調されている。昭和初期の能登の風景や人々の営みも伝わるのでは」と話す。

 連載の挿絵は絵師・小村雪岱(せったい)が担当し、各回を異なる絵で彩った。東京から訪れた日本語教師の竹原千春さん(31)は「挿絵とともに小説が楽しめた。雪岱の挿絵に鏡花の独特で怪しい世界観が表れている」と話した。

 展示されている新聞は昨年2月、同館が泉鏡花の研究者から譲り受けた。今年1月13日の企画展開催を目指し準備を進めてきたが、元日に能登半島地震が発生。同館も白壁の一部が崩れ、補修のため開幕が2月22日に遅れた。

 同館は「能登のためにやれることをやりたい」と能登の風景を描いた山海評判記の挿絵をあしらったマルシェバッグを販売し、売り上げの2割を義援金として被災地に寄付したという。能登地域を写真や図で紹介するコーナーも設けている。

 「新聞原紙で読む『山海評判記』」は19日まで、同館(076・222・1025)で。火曜休館。一般310円、65歳以上210円、高校生以下無料。(砂山風磨)

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