死者8人、重軽症者約600人を出したオウム真理教の松本サリン事件から、今年で30年。元放送記者による「体験を語る会」が6月1日、長野県松本市で開かれる。元記者は報道に携わった一人として「反省と教訓を心にとめなければいけない事件。どういう状況で、どう行動したのか。丁寧に説明したい」と話している。

 事件は1994年6月27日深夜、松本市の住宅街で起きた。オウム真理教の教団関係の訴訟を担当していた長野地裁松本支部の裁判官官舎を狙ったとされる。発生後、第1通報者の河野義行さんを犯人視した警察とマスコミが批判を受けた。

 体験を語るのは、信越放送で記者や報道部長を務めた召田政春さん(73)。事件当時はニュース報道に責任を持つデスク職だった。55歳から松本市へ異動し、節目ごとに河野さんや被害者らへ取材を重ねた。

 65歳で退職して報道の一線を離れたが、近年は「体験をこのまま腹に収めるのではなく、失敗も含めて説明したい」との思いを強くする。

 昨年から長野ペンクラブの冊子などに体験をつづってきた。河野さんに疑いを向けた当時の報道を「結果的に誤りだった」と振り返り、「語る会」に向けて、こう呼びかける。「教訓はこういうことだと、単純に言うのは控えたい。丁寧に状況を説明して、(参加者が)いろいろな角度から事件のことを語ってくれればいいと思います」

 「松本サリン事件30年元放送記者の体験を語る会」は6月1日午後2時から、松本市中央公民館Mウイングで。申し込み不要、無料。(高木文子)

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