電気自動車(EV)開発の新興企業「フォロフライ」(京都市)が、ガソリン車並みの価格で新技術を搭載したEVを提供しようと、海外の自動車メーカーと協力して中型トラックを開発している。EVの普及には価格の高さが課題だが、分業で技術開発費を抑える。バンなどの商用車を昨年から展開し、低価格を武器にシェアを拡大。充電を管理するシステムへの対応も進める。(共同通信 木村遼太郎)
EVは航続距離がガソリン車より短く、充電設備もガソリンスタンドに比べると普及していない。小間裕康(こま・ひろやす)最高経営責任者(CEO)は参入時、地域の配達拠点と最終配送先の間を結ぶ「ラストワンマイル」向けの商用車に着目した。走行距離が短く配達拠点で充電しやすい利点があり「導入に弾みがつくと考えた」と話す。
ドラム缶レンタル事業「MSC」(大阪市)は昨年9月、初代モデル「F1 VAN」を1台導入し、最長で往復200キロ程度の運送や社用車として利用している。稲垣潤(いながき・じゅん)社長は導入理由として、補助金を適用した価格や脱炭素化への貢献を挙げる。「低速での加速は意外と良い。突然の取引にも活躍する」と語る。
初代モデルでは、EVの基礎構造体となる車台に中国製を採用し、コストを削減した。日本の安全基準レベルに合わせ、横滑り防止装置や急速充電への対応といった100項目以上の設計を変更。バン型とトラック型の計3車種を昨年7月から本格出荷し、既に200台以上を販売した。定価は約570万円だが、補助金を適用すれば390万円程度になる。
今年夏ごろからは、欧州と中国の自動車メーカー数社と協業し、中型トラックを開発している。衝突を軽減する自動ブレーキや小回りを重視した車体設計など、新しい技術を分業開発して費用を抑える。生産は他社が担い、完成後はメーカーの強みがある整備網や顧客層ごとに展開する。
国内の他社との連携にも力を入れる。初代モデルは、「EVolity」(東京)が提供する充電管理システムに対応する。システムは電力の使用量を平準化したり、充電時間などの経歴を記録したりできるといい、利用者の利便性向上につながる。
小間氏はEV開発は、ITやインフラサービスとの連携が不可欠だと指摘。「ものづくりのあり方はどんどん変わっていく。重厚長大だった自動車産業も、IT業界のように水平分業が進むだろう」と見通している。
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