ノルウェーの高校で被爆について話した日本被団協の代表団(11日、オスロ)

【オスロ=桜田優樹】ノーベル平和賞を受賞した日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の代表団は11日、ノルウェーの首都オスロの高校を訪ね、被爆体験を証言した。親族を亡くした経験や戦後の苦しい暮らしぶりなどを伝達。「原爆は地球上に1発もいらない。核兵器廃絶に心を寄せてほしい」と訴えた。

「79年前の1945年。広島、長崎の街は一瞬で壊滅した。今も原爆の残虐さと放射能は被爆者を苦しめている」。11日午後、オスロ郊外の高校。広島で胎内被爆をした日本被団協事務局次長、浜住治郎さん(78)は約200人の生徒に語りかけた。

父は爆心地近くの会社に出社し帰らぬ人に。遺品のバックル、がま口の金具、鍵をスライドに映し、「核兵器がゼロになり、核兵器の脅威が無くなるまで被爆者は安心して死ぬことはできない」と胸中を明かした。

生徒からは「ロシアのプーチン大統領は『核兵器を使わないとは限らない』と発言している。日本被団協としてはどのような訴えをしてきたのか」との質問も出た。

日本被団協代表理事の横山照子さん(83)は被団協が核保有国の政府に面会を求め、市民と交流を重ねてきた歴史を紹介。「戦争をやめるために原爆を使ったと言っていた米国の人でも、今の若い世代は『それは間違いだ』と発するようになった。被爆の実相をずっと伝えていかなければならない」と活動の意義を説いた。

証言を聞いた女子生徒(19)は「重いやけどを負った被爆者の写真を見て、原爆の被害の深刻さに気づかされた。多くのことを学んだ時間だった」と振り返った。

今回の取り組みは同高教諭の新谷智子さん(51)が日本被団協に打診し、実現した。新谷さんは「申し出を快諾してくれてうれしかった。生徒らが真剣に話を聞く様子を見て、企画してよかったと感じた」と話した。

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