“106万円の壁”撤廃に 厚生年金 新たに200万人加入対象見込み

“手取り減っても 手厚いサポートは魅力”

およそ90人の従業員がいる美容関連商品の販売会社では、ことし10月からの厚生年金の適用拡大に伴い「年収106万円の壁」に関係するパート従業員10人を対象に、働き方の見直しを行いました。

この会社で、週25時間働いてきた24歳の女性です。

週19時間に減らすと、手取りが年間30万円ほど減り、25時間のままだと社会保険料の支払いで手取りが年間およそ20万円減る計算となりました。

女性は独身で、国民年金に加入する「第1号被保険者」でしたが、厚生年金に加入する「第2号被保険者」になれば保険料の支払いが労使折半となり、保障が拡充されることなどにメリットを感じ、労働時間は週25時間のまま手取りが減っても、厚生年金に加入することを選択しました。

「今までは個人で役所に行って国民健康保険と国民年金の手続きをしていました。今までよりも手厚いサポートがもらえることがわかったので、手取りは減るけど長い先を見たときにも魅力的かなと思いました」

「週20時間以上」 新たな壁に?

会社によりますと、10人のうち週20時間以上働くことを選んだのは、女性を含めて4人だった一方で、残りの6人は配偶者の扶養に入ったまま働きたいと、週20時間未満に就業時間を調整しました。

会社では、今回は必要な働き手を確保できたものの、「週20時間以上」の要件が、今後新たな壁となるのではと考えています。

店長
「106万円の壁の撤廃で、働き方の選択肢が広がるのはいいことだと受け止めますが、週20時間という要件が残ると、働き控えが解消されない部分があるのではないか。制度をシンプルにするなど、働きやすい環境の整備が必要だ」

国の支援策 活用の動きも

およそ300の店舗を展開するスーパーマーケットでは、現在、各店舗で従業員が10人から20人ほど足りず、さらに年末年始にかけて人手不足が想定されています。

会社では、働くことができる人に労働時間を増やしてもらうと、今年度から年収が106万円以上となって厚生年金に加入し、配偶者の扶養を外れたおよそ900人について、手取りが減らないよう国の支援策を活用しています。

そのひとりで、神奈川県川崎市の店舗で働き、客からインターネットで注文を受けた商品の発送などを担当する43歳の女性は、ことし4月から1週間の労働時間を14時間増やして、週5日で32時間勤務しています。

厚生労働省が、賃金要件を撤廃する案を示したことについては。

「壁を越えてはいけないと抵抗感があったが、子どもも大きくなり、手取りを増やしたかった。ほかの人も自分のように自由に働けるようになったらいいと思う」

「106万円以内」に抑える人も

一方、この店舗で野菜の加工などを担当する51歳の女性は、今も年収を106万円以内に抑えています。

「娘が高校生なので手取りを一番に考えています。制度を理解した上で、労働時間を増やすことも検討したいです」

“人手不足の根本的な解決にならず”

会社では、賃金要件の撤廃で「働き控え」をする従業員は現在より減ると考えていますが…。

店長
「勤務の調整を当面しなくてもよくなり、プラスもありますが、人手不足の根本的な解決にはなっていないとも思います。制度を分かりやすく簡素にしてほしい」

そして、厚生年金に加入する人が増えると、労使折半となっている保険料の負担も増えることから「企業の負担にならないよう国の支援や補助が必要だ」と話していました。

今後の課題は

政府は、厚生年金に加入すると、将来の年金受給額が増えるほか、けがや病気で休んだ際の傷病手当金を受け取れるなど、さまざまなメリットがあり、より安心して働けるようになるとしています。

一方、今回の見直しでは、週20時間以上という労働時間の要件は維持され、「働き控え」は解消しきれないとの指摘もあり、今後の検討課題となることも予想されます。

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