◆ざっくりいうと
量子コンピューターに応用された計算手法の基本原理を提案した。門脇正史(かどわき・ただし) 1971年、東京都出身。99年、東京工業大(現東京科学大)理工学研究科物理学専攻博士課程修了。大学院在学中の98年に、量子アニーリングの基本原理を指導教官とともに提案。その後、半導体、バイオ、製薬などの企業での研究開発に従事したほか、京都大などで研究にも取り組んだ。2018年からデンソーで量子アニーリングや量子コンピューターの研究に携わる。
スーパーコンピューターでも計算が終わらない膨大な量の問題を一瞬で解ける可能性があると期待される量子コンピューター。世界初の量子コンピューターが2011年、カナダの企業から発売され世界を驚かせました。実はそのコンピューターは日本の大学が論文で発表した「量子アニーリング」という手法を基に開発されていたのです。その執筆者の一人が門脇正史・デンソーAI研究部担当次長。産業技術総合研究所にも籍を置いて人工知能(AI)と量子コンピューターの融合を研究しています。量子アニーリングのアイデアの誕生や、AIとの融合について聞きました。 (永井理、杉藤貴浩) -量子アニーリングの研究を始めたきっかけは。 大学院の指導教官だった西森秀稔教授はスピングラスという分野の専門家です。たとえば、金に鉄をわずかに混ぜて合金にすると、鉄原子の電子スピン(電子の持つ磁石性質)の間に複雑な力が働き、スピンの向きがでたらめで不安定な要素の残った状態(スピングラス)になります。それはまるで相反する利益が絡み合う社会課題と同じ問題だと物理学者は解釈しました。スピングラスの最も安定な状態を計算する方法が分かれば、難しい社会課題も解決できるのではないかと。 最も安定な最適解を求めるシミュレーティッドアニーリングという計算手法がありました。西森先生は、この手法が用いている熱によるゆらぎの効果と、量子の持つゆらぎの効果の類似性から、量子力学を用いて最適解を求める手法ができるのではと思いつかれたようです。私はそれを博士論文のテーマとして取り組みました。そして論文を出すときに、この手法を量子アニーリングと名付けました。◆応用
-その量子アニーリングが10年あまりで、現実の量子コンピューターに応用されたわけですね。どう感じましたか。実用化されるということは考えていましたか。 10年、当時の会社から出向して米国の研究所にいたとき、高校の同級生から「おまえの名前がニュースに出てるぞ」と教えられました。ネットを見ると、カナダのディー・ウエーブ・システムズという会社が量子コンピューターを作り、米航空宇宙局(NASA)と契約したというニュースが出ていて、それは日本人が出したアイデアに基づいているということで私と西森先生の名前が書いてありました。米国の先生が、私たちの論文をその会社に紹介したことがきっかけで研究開発が始まったそうです。 ほとんどの理論物理学の研究者は実用のことを考えずに研究していると思います。西森研究室も例に漏れず、純粋な理論上の興味で研究していました。そもそも量子アニーリングの研究が量子コンピューターにつながるとは考えていませんでした。 -物理学や量子力学に興味を持ったのはいつごろですか。 小学生のときから電子工作をしていました。中学ではパソコン。高校のとき物理に興味を持ち、大学の物理学科に。大学ではもちろん量子力学を学びますが、特に量子力学を研究したいとは思っておらず、西森研究室には神経細胞をモデルにした「ニューラルネットワーク」の研究をするつもりで入りました。でも結局、大学院の5年間、私はニューラルネットワークの研究を一度もしませんでした。 あまり真面目な学生じゃなくて、当時出てきたリナックスというコンピューターの基本ソフトをいじってばかりいました。先生が量子アニーリングのアイデアを思いついたときに、私は研究テーマ選びに困っていたので取り組むことになりました。振り返ってみると、誰もやっていない分野のため、自分たちのペースで研究を進められるテーマであったことは運が良かったと思います。この経験から...残り 1726/3452 文字
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