長久保記者㊨と福岡記者
◆「こんなことをしていいのか」と感じた
大島 長久保さんと福岡さんは、どういったきっかけでマイナ保険証の取材を始めたのですか。 長久保 きっかけは、去年の春頃、趣味のロードバイク仲間の医師や歯科医師に「もうすぐ今の保険証がなくなるが、うちの患者さんは高齢者が多く対応に困るので取材してほしい」と言われたことです。 最初に、2023年の4月に反対集会を取材して、障害者施設の方から「管理できない」という声を聞きました。 その後マイナ保険証に関するトラブルや、その総点検、顔認証マイナンバーカードを作るといった政府を巻き込んだ大きな流れになり、ずっと取材を続けています。 大島 マイナ保険証への問題意識はいつ感じましたか。 長久保 マイナ保険証の反対集会の報告で、障害者の方がマイナンバーカードを作りに行ったら、障害で黒目がないので、写真を却下されたと聞きました。
長久保宏美（ながくぼ・ひろみ） デジタル編集部記者。趣味はロードバイクでのヒルクライム、長距離ツーリング。
総務省のマニュアルにも、カードの写真は、正面を見て無背景で正面を見る、目をつぶっていないなどありますが、その人まで却下するっていうのは何なんだと思いました。その後、国はマニュアルを変えたものの、却下された人の気持ちを考えたら、こんなことしていいのかと問題意識を感じて、ずっと取材を続けています。◆東京新聞に寄せられた公務員の声とは…
大島 全国民が対象のものですもんね。福岡さんは、どうですか。 福岡 読者の声をメールや手紙でもらう中で、どこにも困っていることを伝える場がないという声が結構あって。どこに相談しても聞いてくれないみたいな声が1件や2件じゃなかったんですよね。このままじゃまずいんじゃないかな。ていうのはすごく感じました。 長久保 いろいろな声が寄せられています。東京都内の現職の公務員で、マイナンバーの発行事務をやっていた人から、情報提供があった。「私は区民に贖罪の気持ちがある」と。マイナンバーカードの説明会で区民に「保険証ってなくなるんですか」と聞かれて、「そんなこと絶対ありませんよ」と答えてしまった。「保険証がなくなるとは私は公務員として思いませんでした」と。その人はやっぱり「突然こんな形で変えられるのは考えられない」と怒って、情報提供をしてくれたのだと思います。 大島 そこは全然現場の声を聞いた上での決定ではなかったってことになりますよね。今まで東京新聞では、マイナ保険証に関する様々な報道をしてきましたが、印象に残ってる反響はありますか。 福岡 もちろんマイナ保険証を進めるべきだという方からの意見も来ていて、基本的には全部読んでいます。それと同時に、東京新聞がマイナ保険証の記事を書いてくれて、嬉しいという声は本当にたくさん寄せられているので、自分たちが書き続ける必要があると思っています。
福岡範行（ふくおか・のりゆき） デジタル編集部記者。基本は人見知り。電話は小学生のころから苦手。
◆「マイナ保険証を便利に使っている」の声も
大島 読者からも、私は便利に使ってるという声も一部あります。一つ紹介します。 「私はマイナンバーカードを持っているがメリットを感じている。コンビニで住民票を取得できるのが便利です。便利さを感じている人の声も記事で紹介してほしい。批判が多いとカードを作ってしまった人が悪いような気がしてしまう」 実際に便利に使っている声もあるっていうことについては、どう思いますか。残り 1131/2647 文字
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