能登半島地震の被災地で炊き出しをするサリム・マゼンさん(左端)=2024年2月、石川県(富山ムスリムセンター提供)

 「困っている人を助ける」。富山県に住むイスラム教徒でつくる「富山ムスリムセンター」の代表理事サリム・マゼンさん(50)は、能登半島地震など全国の被災地を回り、カレーの炊き出しなどボランティア活動をしている。活動の基になっているのはイスラム教の教え。「より早く支援を届け、多くの人に喜んでもらいたい」と話す。(共同通信=堤悠平)

 サリムさんはシリアの首都ダマスカス出身。モスクワの大学で機械工学を学ぶ傍ら、貿易会社で働いた。卒業後、仕事のため富山に移住。貿易業の会社を立ち上げた。

 仲間とセンターを立ち上げたのは2014年。留学生の住まい確保やイスラム教の戒律に従ったハラル食の認証などをしている。センター開設と共に、災害ボランティアを本格的に始め、熊本地震や広島土砂災害の被災地などに駆けつけた。

 今年の元日に発生した能登半島地震では、3日後の4日に初めて現地入り。レストランで働く仲間がカレーを作り、これまで50回以上石川県輪島市や珠洲市を訪れ、多い時は1日で600人分を提供したという。

 センターの仲間と資金を募り、内戦が続くシリアや、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャのために「富山」を冠した学校も建設した。「『故郷を離れているから、今住む日本や富山のことは関係ない』という姿勢は教えに反する。全国どこでも、困っている人がいれば、できる限りのことをする」とサリムさん。

 今後は災害発生後、少しでも早く被災地に支援を届けられるよう、炊き出し用の機材やスタッフを増やすなど、態勢の充実を目指す。「人間には温かい食事や住まいが必要。災害や戦争で苦しむ人々に少しでも安心してもらいたい」

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