能登半島地震で被災した家屋から見つかった着物や風呂敷などを使った「Notoノート」の制作に、石川県能登町の女性らが取り組んでいる。手芸作家の西ふさえさん(76)がカバー作りを始め、地元の仲間を増やしている。西さんは「被災で職を失った人の収入や、ふさぎ込んだ人の生きがいづくりにつなげたい」と期待を込める。(篠崎美香)

和気あいあいとノート制作に取り組む西ふさえさん(中央)ら=石川県能登町神和住の「手づくり処神和住」で

 能登町神和住(かみわすみ)の工房「手づくり処神和住」に4月初め、近くに住む主婦ら5人が集まった。「これ大島紬(つむぎ)や」「青海波(せいがいは)もある」と着物の種類や紋様で盛り上がりながら作業を始めた。  布は、がれきの整理や家の片付けで処分するはずの着物などで、住民から持ち込まれた。布を採寸し、形崩れを防ぐ接着芯を取り付けてミシンで縫い、アイロンをかけてノートにかぶせて完成。A5サイズでペンを入れるポケットも縫い付けてある。手際良く作業を進めながら、「罹災(りさい)証明書もう届いた?」「来たで」「うち半壊だったわ」と近況を報告し合った。

◆「ピアカウンセリング」の役割も

 ノート制作が始まったのは、工房が災害支援団体「チーム神戸」の活動拠点となったのがきっかけだった。団体の金田真須美代表(65)は、西さんが「うちはたいしたことない」と気丈に振る舞うのが気になった。工房の扉や給湯器などは壊れていたほか、発生直後は西さんの作品の販路も断たれていたからだ。  金田代表は、西さんの裁縫技術を生かしたノート作りを提案。同じ背景を持つ人同士が制作を進める中で、対等な立場で話を聞き合う「ピアカウンセリング」の役割も果たすという。

西さんらが制作を進めている「Notoノート」

 「珠洲(すず)市や輪島市はここよりもっと大変で。申し訳なくなる」と西さん。「1ページ目には被災地が一歩前に踏み出す言葉を書いて。ノートを手に取り奥能登とつながる人の輪を広げたい」と願う。  1冊1000円。売り上げは、職を失った女性の仕事づくりと被災地の復旧支援に活用される。能登町天坂の「味知の駅能登 能海山市場」で扱ってもらうほか、全国で販売できる場所も探している。問い合わせは、メール=abimasumi413@gmail.com=へ。 

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