一般社団法人が設立する医療機関は、医師が代表となる医療法人とは違って、管理者となる医師がいれば異業種でも参入が可能で、最近は、都市部を中心に美容クリニックの開業が相次いでいます。

厚生労働省のまとめでは、一般社団法人が開設するクリニックの数は、去年の時点で780か所に上り、4年間でおよそ2倍に増加しています。

医療機関は法律で、営利を目的に開設してはならないとされていますが「一般社団法人が開設するクリニックなどの中には、利益を優先し、医療の安全や質が十分確保されていないところもある」という指摘が専門家などからあがっています。

こうした中、厚生労働省は、28日に開かれた専門家で作る部会で、一般社団法人がクリニックを開設する際などに医療法人と同等の書類の届け出を求めるなど、より厳格に経営や事業の内容を確認する仕組みを新たに導入する案を示し、了承されました。

具体的には、事業計画書や財務諸表などの届け出を想定していて、すでに開設されているクリニックに対しても、定期的な届け出を求めることを検討しています。

一般社団法人は医療法人に求められている都道府県への定期的な事業報告などが不要なほか、監督官庁も無く、厚生労働省は経営や事業内容のチェックを強めることで「非営利性」の徹底を図る考えです。

厚生労働省は今後、具体的な確認項目などを検討し、政令などの改正手続きを進めることにしています。

専門家「患者の安全性がより高まり 望ましい対策」

医療政策に詳しい千葉大学病院次世代医療構想センター長の吉村健佑 医師は、一般社団法人が開設する医療機関について「医師でなくても一般社団法人を設立して医業に参入しやすいのが特徴で、自由度も高いことから一般社団法人を選択する医療機関が増えている」と指摘しています。

そのうえで「そもそも一般社団法人が設立している医療機関すべてに問題があるわけではなくきちんと診療を行う所もたくさんある。一方で、医療の経験の乏しい人が法人の事業運営の責任を担った場合に、十分な安全性を担保できるのかという懸念も指摘されてきた。経営や事業内容をより厳格に確認していく今回の国の方針は、患者の安全性がより高まり、望ましい対策と言える」と話しています。

さらに、「一般社団法人の医療機関であっても、非営利で行われ、安全な医療を提供しているかを確認するのは、国や自治体の責任と言える。単に書類上のチェックで終えるのではなく、行政の職員が直接、現場を訪れて状況を確認することも必要だ」と指摘しています。

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