東京電力福島第1原子力発電所事故を巡り、同社の株主が旧経営陣に23兆円超の賠償を求めた訴訟の控訴審が27日、東京高裁で結審し、判決期日が2025年6月6日に指定された。

一審判決は旧経営陣に13兆円超の賠償を命じており、巨額賠償の妥当性に対する高裁の判断が注目される。

この日の最終弁論で株主側は、改めて勝俣恒久元会長=10月に死去=ら旧経営陣5人には「過酷事故を防ぐための善管注意義務があり、責任は重大だ」と指摘。事故の9年前に政府機関が公表した地震予測「長期評価」に基づき、津波の発生を予測し、浸水対策を講じることが可能だったと主張した。

一方、旧経営陣側は「長期評価に安全対策を義務付ける信頼性はなかった」とし、津波の発生は予測できず、注意義務違反はないと反論した。

一審判決が主要な建屋や機器の浸水対策をすれば事故は回避できたなどと認定した点についても「後知恵の認定を重ねた」とし、「事故前の知見」で判断するよう求めた。

結審に先立ち、勝俣氏の遺族が相続人として訴訟を承継することが認められた。

株主らが東電に賠償金を支払うよう求めて提訴したのは事故翌年の12年3月。主な争点は旧経営陣が事故前に巨大津波を予見できたかや、浸水対策などで事故を防げたかどうかだった。

22年7月の一審・東京地裁判決は長期評価の信頼性を認め、旧経営陣5人に注意義務違反があったと認定。元常務を除く旧経営陣4人に総額13兆3210億円の賠償を命じた。

原発事故を巡る旧経営陣の責任を認めた判決は初めてで、国内の裁判で過去最高の賠償額とみられる。旧経営陣4人と株主側の双方が控訴した。

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