夜の橋の上。欄干のそばに人影が見えた。立ったまま、ずっと何もしない様子。なぜか欄干にはロープがくくりつけられてあった。

 なにかがおかしい。

 大学生は立ち止まって声をかけた。「大丈夫ですか」。この声かけが、1人の命を救った。

 3月28日午後9時過ぎ。鳥取大学工学部3年生の長畑倖星(こうせい)さん(22)は、鳥取市内の川にかかる橋の上を歩いていた。橋の上にいた若い男性は、ぼーっとした様子。「大丈夫ですか」との声かけにも返答はない。男性の目はうつろだが、「見つかったか」という表情にも見えた。

 自殺をしようとしているのではないか。スマートフォンで110番通報した。

 男性は欄干からロープを外し、片付け始めた。ロープの先端には輪っかが作られていた。長畑さんは男性のそばを離れず、見守り続けた。110番から8分後、警察官が到着。無事に保護された。

 鳥取署によると、男性は欄干にかけたロープで首をつろうとしていた可能性が高いとみられるという。男性の家族は「声をかけていただいて助かりました、感謝しています」と話しているという。

 鳥取署の笠田孝二署長は4月26日、長畑さんに感謝状を贈った。取材に長畑さんは「うれしいです、本当に良かったと思います」。そして自殺を考える人について「生きていたら何かあるし、現状から逃げてもいいと思うし。生きて欲しい」と語った。

 署の担当者は、自殺を図ろうとしているとみられる場面に遭遇したら「まずは止めることが大事。迷わず110番して欲しい」と呼びかけている。(奥平真也)

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