プラスチックごみの量は年々増え続け、OECDによりますと2019年には世界で3億5300万トンと20年で2倍以上に増えています。
一方、リサイクルされたのは9%にとどまり、20%以上は適切に管理されず、このうち2200万トンが海や陸など環境中に流出したとされていて、生態系をはじめ、人の健康への影響も懸念されています。
こうした現状を受けておととしの国連環境総会で、プラスチックによる環境汚染を防ぐため、法的拘束力のある国際条約をことし中にとりまとめることを決議し、25日から韓国・プサンで開かれる最後の政府間交渉委員会で条文案の合意を目指しています。
焦点の1つは増え続けるプラスチックの生産量の規制についてどこまで踏み込めるかです。
EUやアフリカなどは各国の生産量を一律で規制する必要があると主張している一方、中国やインド、それにプラスチックの原料となる石油を産出する産油国は規制することに反対しています。
また、日本は一律の規制ではなく、各国の事情にあわせて目標や規制を設け、リサイクルなどを進めることが必要だとしています。
このほか、プラスチックに使用され、発がん性など健康への影響が懸念される化学物質のほか使い捨て食器などの製品を規制するかどうか、適切なリサイクルや処分のための国際的な製品設計の基準、それに環境中への流出防止策の各国への義務づけなどについて議論が行われる見通しです。
交渉は来月1日までの予定で行われます。
廃プラスチックめぐる日本の現状
化学メーカーなどで作る「プラスチック循環利用協会」のまとめによりますと、国内の廃プラスチックの総排出量は2022年は823万トンで、1980年以降最も多かった2001年の1016万トンから減少傾向が続いています。
総排出量のうち、およそ6割は焼却の際に発生する熱エネルギーを発電などに利用する「熱回収」として処理され、再びプラスチックの原材料として再利用することでより環境への負荷が少ないとされる「マテリアルリサイクル」は2割程度などとなっています。
また、2018年の国連の報告によるとプラスチック廃棄物の47%は容器包装で、1人当たりの発生量は2015年時点で日本は年間およそ32キロで、アメリカに次いで世界2位となっています。
専門家「削減に向けた数値目標設定の道筋が焦点」
今回の国際条約をめぐる交渉について、海洋プラスチック問題に詳しい九州大学の磯辺篤彦教授は、プラスチック削減に向けて数値目標設定の道筋をつけることができるかが焦点だと指摘しています。
磯辺教授は「プラスチックそのものを日本はしっかりと回収しているものの、問題は母数が大きいことだ。社会に出回るプラスチックの総量を減らしていくことが、今、求められている」としています。
海外の研究では、先進国の廃プラスチックの回収率は高い水準にあるが、回収できていない数%のプラスチックが海などに流出しているとの指摘があるとしたうえで「日本のようにプラスチックのリサイクルを非常に高い水準で行ったとしても、個人が使用したプラスチックは一定程度、海などの環境中に流出していることから、その前提に立って対策を進めることが必要だ」と話していました。
そのうえで「プラスチックは安価で、加工しやすい、輸送も楽で清潔で、すばらしい材質であるだけに、これを減らすというのは私たちの生活スタイルや産業構造も変えることになる。数値目標を出すことによって、それを達成するために社会の変革や産業構造の転換するという流れになることが理想だ。新しい挑戦に向かってほしいと思う」と今回の交渉への期待を話していました。
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