高校野球の元主将が、海外でベースボールの指導者になる。その第一歩を踏み出すのは、伏見有史(ゆうし)さん(29)。この秋、国際協力機構(JICA)の海外協力隊員として、西アフリカのベナンに派遣されることが決まった。出発を前に「失敗が許されるのが野球。その面白さを教えていきたい」と張り切っている。
伏見さんは中泊町出身。高校時代は青森県立木造高で1年生から内野手のレギュラーで活躍し、夏の青森大会ベスト4入りに貢献した。3年生のときは、県高校野球連盟の優秀選手賞にも選ばれたほどだ。
それでも、悔いが残った。主将を務めた2013年夏、最後の青森大会はベスト16にとどまった。
「甲子園が目標で、期待されていたチームでした。でも、主将として仲間をまとめきれなかった」
悔しさをバネに、富士大学(岩手県花巻市)で野球を続け、卒業後は社会人野球のきらやか銀行(山形市)で練習に励んだ。
ところが22年、銀行の経営不振により、硬式野球部が無期限の休部に。元部員でクラブチームをつくったが、練習や試合の機会は限られ、白球への情熱を持て余すようになった。
「今度は選手ではなく、指導者として野球に取り組みたい」。海外協力隊の活動を知り、新たな道に進むことにした。
ベナンでは、サッカーは盛んだが、野球はそれほど広まっていないという。派遣は2年間。小学生から代表チームまで、幅広い世代に指導する予定だ。
野球を通じて伝えたいことがある。「ほかのスポーツに比べて、失敗が多い。でも、それが面白み。失敗から学ぶことも多い。自分も高校野球で悔いが残ったから、卒業後も頑張ることができたと思うのです」
ベナンでは野球のイベントや大会も企画しながら、普及をめざす。
「西アフリカで野球といえば、ベナン。そう言われるように励んでいきたい」(渡部耕平)
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