衆院東京15区補欠選挙の告示日、電話ボックスの上から声を上げる政治団体「つばさの党」から出馬した根本良輔被告㊨(2024年4月、東京都江東区)=共同

衆院東京15区補欠選挙を巡る政治団体「つばさの党」の選挙妨害事件で、公職選挙法違反(選挙の自由妨害)罪に問われた党代表の黒川敦彦被告(46)ら3人の初公判が20日、東京地裁で開かれた。弁護側は3人の無罪を主張した。

他に起訴されたのは補選元候補の根本良輔被告(30)と党幹部の杉田勇人被告(39)。黒川被告は罪状認否で起訴内容を否認し「極めて政治的に意味のある適法な行為。憲法で保障される表現の自由、政治活動の自由に基づき無罪だ」と述べた。

検察側は冒頭陳述で、2022年ころから党の知名度を上げて動画サイトで経済的利益を得る目的で配信を始めるようになったと指摘。注目度が高い補選に目を付け、根本被告を立候補させることにした経緯を説明した。

3人は選挙戦略として「他陣営への攻撃がメインです」などと相談し、妨害行為をすることを決定。拡声器で各候補者に詰問するといった行為を繰り返し、聴衆が演説の内容を聞き取ることを困難にしたと非難した。

弁護側は「外形的事実は争わない」としたうえで、公選法違反罪には該当しないと主張した。憲法上、保護されるべき政治的表現活動だったとも述べた。

起訴状によると、3人は選挙期間中の4月中旬、立憲民主党や無所属などの候補者らの街頭演説を拡声器などを用いて大音量で妨害したほか、各陣営の選挙カーを追いかけ回して交通の便を妨げたとされる。

警視庁は10月までに、演説妨害4件と交通妨害4件の計8件について3人を立件した。

公選法は「有権者が自由に表明する意思に基づいて(選挙が)公明かつ適正に行われることを確保する」ことを目的とする。一方、憲法では表現や言論の自由が保障されており、選挙妨害の摘発は慎重な判断が必要とされる。

今回の事件では、警視庁は3人の行為によって演説を聞けなかった有権者が公正に投票できず、公選法に抵触する可能性があるとして警告。その後も継続して他陣営の選挙活動を妨げたとして立件に踏み切った。

公選法で定める「選挙の自由妨害罪」は、違反すれば4年以下の懲役か禁錮、または100万円以下の罰金が科される。罰金刑以上の有罪が確定した場合、公民権が原則5年停止され、選挙への立候補や投票ができなくなる。

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北星学園大の岩本一郎教授(憲法)の話 街頭演説は候補者と有権者の対話の場であり、民主的な選挙を担保するための基盤だ。ヤジも政治的言論として尊重されるべきだが、他の候補の主張を塗りつぶすような手法は、むしろ国民の知る権利や熟議を損なう。
言論活動への過度な規制は望ましくないが、選挙でのSNSの影響力は増してきており、過激な言動で注意を引こうとする行為は続く恐れがある。現状の公選法の規定に曖昧さがあり、今後は言論活動と選挙妨害との明確な線引きが必要となる。

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