◆埼玉・坂戸市長「日本の自治体がつぶれる」
「頭に来てるよ、みんな党利党略だから」。埼玉県坂戸市の石川清市長（74）は18日朝、「こちら特報部」の取材に開口一番、憤りを表した。怒りの矛先は国民民主と、その協力を得なければ政権運営がおぼつかない自民党だ。
「税収が18億円減り、市民サービスに影響が出る」と訴える石川清市長＝18日、埼玉県坂戸市役所で
坂戸市は埼玉県中部に位置し、人口約10万人。市長4期目の石川氏は、特報面の記事が出た翌日の8日、自ら東京新聞読者部に電話し「103万円の壁を引き上げると日本の自治体がつぶれる」と訴えていた。 市長室で、石川氏は記者に1枚の紙を示した。市課税課が作成した壁引き上げ時の影響の試算だった。◆18億円の税収減、あれもこれもできなくなる
103万円の壁を引き上げると、国税である所得税だけでなく、地方税である個人住民税も、所得割部分の非課税ラインが連動して上がる。試算では、壁が178万円の場合は約18億5000万円、140万円でも約9億9000万円、市の税収が減る見通しとなった。 石川氏は「18億円の税収減なんてとんでもない政策だ。市民サービスが確実に減る」と断言した。
坂戸市の石川清市長は「103万円の壁」が引き上げで事業ができなくなる例として小中学校の給食費無償化などを挙げる。写真は学校給食の例＝1月、川崎市で
18億円分の事業規模のイメージとして「市の主な子ども支援対策事業の費用が17億円くらい」と説明しながら、小中学校の給食費無償化、18歳までの医療費無償化などの21事業を示して「これだけの事業ができなくなる」と主張した。◆国民民主の「無責任発言」に怒り心頭
市の財政は2008年、三位一体改革による地方交付税の減少や、景気悪化に伴う税収減で財政調整基金が一時的に1000万円まで落ち込んだ過去がある。「よい政策でも、お金がなければできない。お金は非常に大切だ」と語る石川氏。怒りが増したのが、国民民主幹部のテレビ番組での「財源をどうするのかは、政府・与党が責任を持って考えてほしい」との発言だという。「あまりにも無責任。国民からの人気取り狙いで、地方のことを全く考えていないじゃないか」
記者会見する国民民主党の玉木代表＝11月12日、国会で（佐藤哲紀撮影）
国民民主の玉木雄一郎代表は13日、民放番組で、総務省が自治体に対し、減収があるから引き上げをやめてくれと言うように工作していると発言した。石川氏は「（働きかけは）ない」と否定。「逆に総務省には『これだけ税収減りますよ』って堂々と言ってほしい。全国の首長がもっと危機感を持って反対するよ。国が補てんする保証はどこにもないんだから」と返した。◆市民に伝えると「みんな驚いた顔を…」
石川氏は最近、マラソン大会などの催しで、壁の引き上げに伴う税収減で市民サービスが低下する恐れを市民に伝え始めたという。「みんな驚いた顔をする。知られていないから引き上げに賛成する人も多い」として「本当に178万円って妥当な金額なのか。必ず市民にしわ寄せが行く。市長の立場では反対だ」と強調した。
埼玉県坂戸市の玄関口である東武東上線坂戸駅前＝18日、埼玉県坂戸市で
坂戸市民は壁の引き上げをどう思っているのか。...残り 1824/3165 文字
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