ふるさと納税は、個人が自治体に寄付すると金額の一部が所得税と住民税から控除される仕組みで、寄付に対する自治体からの返礼品が人気を集める一方、東京都の自治体は税収が減少しているとして反発を強めています。
これについて、小池知事は15日の記者会見で「受益と負担という地方税の原則をゆがめている。返礼品競争になっていて『寄付の精神を根づかせたい』というところからかけ離れて、官製通販のような制度になっている」と指摘しました。
そのうえで「引き続き都内の区市町村とも連携しながら、根本からきっちり見直す必要があるということを、国に申し入れを行っていく」と述べ、国に抜本的な見直しを求めていく姿勢を重ねて示しました。
世田谷区 減収拡大で行政サービス低下のおそれ懸念
92万の人口を抱える東京 世田谷区は、政令指定都市を除くと、全国で最も人口の多い自治体です。
今年度、ふるさと納税による減収は初めて100億円を超え、都内の自治体では最大となる110億にのぼる見通しです。
減収は年々拡大し、10年前と比べると120倍にもなっていて、区は頭を悩ませていてます。
世田谷区の保坂展人区長は「体験型とか地域貢献型のプログラムを提供するなど工夫を凝らしながら返礼品を提供しているが、減収が170億、180億に到達するのも時間の問題だという危機感を持っている」と話していました。
区立の小中学校は、老朽化のため、令和18年度までに49校の改築が計画されていますが、建築資材の高騰などもあって、費用は1校当たり40億から50億にのぼり、計画の見直しを迫られた例もあるなど、減収による影響を受けているとしています。
区は今後減収が拡大していけば、ゴミ収集や清掃など日々の行政サービスが低下するおそれを懸念しています。
保坂区長は「今のところ影響が出ないよう頑張っているが限界がある。区が毎日、区民に対してサービスを行う中、原資がなくなっていくと、非常に深刻だ」と懸念を示しました。
群馬 ふるさと納税による収入が行政の充実につながる
ふるさと納税による収入が行政の充実につながっているという自治体があります。
群馬県東部に位置する人口1万余りの千代田町では、町内にあるビール工場を生かした返礼品のビールが人気を集めていて、昨年度の寄付額は30億円と群馬県内で最大となりました。
これは昨年度の町の収入の3分の1を占めていて、町は教育環境の充実や子育て支援などに生かしています。
このうち、老朽化のため深刻な雨漏りが多発している町内唯一の中学校では、建て替え計画が進んでいます。
千代田中学校の西本賢校長は「雨漏りを防ぐため改修しても、何年かたつと雨漏りするという繰り返しだった。耐震構造もしっかりしたものに建て替えしてもらうのはありがたい」と話していました。
高橋純一町長は「ふるさと納税は町にとって重要な財源だ。限られた資産を活用しながら、職員と考えたことが、今に結び付いていると思う」と話していました。
一方、東京都の自治体が反発を強めていることについて「中央に資金が集中しているのを是正していこうというのが始まりで、理にかなった制度だと思う。制度の中で地方も努力していく必要があると思う」と話していました。
専門家「住民に伝え 考えてもらうことが必要」
ふるさと納税に詳しい法政大学の平田英明教授は「自治体としては必要な量の公共サービスを提供していく義務があるのが建て前だが、一方で『ない袖は振れない』というのも事実だ。カネがなくなった分、サービスを減らしていくということを考えざるをえないことも住民に伝えて、みんなで考えてもらうことが必要だ」と話していました。
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