原発で深刻な事故が起きた場合に住民の被ばくを低減させる屋内退避のあり方を議論する原子力規制委員会の検討チームの会合が12日、開かれた。10月の会合でチームが示した中間取りまとめについて、対象となる原発5~30キロ圏内の自治体から意見募集したところ、屋内退避中の住民生活を維持する方法に不安や要望があったことが報告された。

◆どの程度までの活動が許されるのか

 規制委事務局の原子力規制庁によると、38自治体から約200件の意見が寄せられた。全国の原発30キロ圏内には、福島県をのぞくと140以上の自治体がある。

原発事故時の屋内退避のあり方を検討するチームの初会合=4月22日

 中間まとめでは、屋内退避中も物資の受け取りや雪下ろしなど一時的な外出を可能とした。これに対し、学校や企業、医療機関、介護サービスの活動がどの程度、許されるのかを示してほしいとの意見があった。外出範囲や時間にも疑問が出された。  食料や生活必需品を提供するスーパーやコンビニ、ガソリンスタンドの営業をどうするのかといった不安も寄せられた。

◆「避難」に切り替える基準を示して

 また、家屋倒壊や電気、水道などのインフラが寸断し、屋内退避できない場合は避難に切り替えるとした点に、具体的な基準を示してほしいとの要望が出された。国は自治体からの情報提供を基に、避難に切り替えるかどうかを判断するため、情報提供のタイミングや内容、情報収集の方法も示すよう求めた。  屋内退避の目安を3日間としたことにも、3日間を過ぎると「自動的に解除される」と住民が誤解する恐れがあるなどの意見もあった。  次回会合は1月ごろを予定し、チームは報告書案を示すとしている。

◆マニュアル化を前提に報告書を

 この日の会合に出席した宮城県の担当者は「現場の対応の課題や懸念、住民に理解してもらう難しさがある。現場目線を反映し、不安を解消するよう充実化してほしい」と話した。

原子力災害対策指針の見直しについて説明する原子力規制委員会の山中伸介委員長=2月14日

 チームを率いる規制委の伴信彦委員は「住民に分かりやすい説明や、どういう時に何をしていいのか、悪いのかマニュアル化してほしいという要望だった。それを前提に報告書をまとめていくのが重要」と述べた。(荒井六貴) 

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