勧告を受けたのは、いずれも東京 千代田区の出版大手「KADOKAWA」と子会社の「KADOKAWA LifeDesign」です。
公正取引委員会によりますと、「KADOKAWA」は去年1月、月刊の生活雑誌「レタスクラブ」の記事の作成や写真撮影の業務を委託する26の下請け業者に対し収益改善を図るためとして4月発売号から原稿料や撮影料を引き下げる通告を行いました。
また、「KADOKAWA LifeDesign」は、ことし4月からこの事業を引き継ぎそのまま引き下げた単価を適用していたということです。
いずれも事前の協議はなく、単価は最大でおよそ39.4%引き下げられていて、下請け業者が本来受け取れるはずだった報酬はことし8月までの試算であわせておよそ590万円に上るとみられます。
公正取引委員会は、「買いたたき」にあたるとして下請け法違反を認定し、2社に対して差額のすみやかな支払いや再発防止のための措置などを講じるよう勧告しました。
下請け業者の中にはフリーランスの人も含まれていて「今後の仕事がなくなる可能性があって言えなかった」などと話しているということです。
今月1日からはフリーランスで働く人を保護する新たな法律が施行されていて、公正取引委員会は「発注する側はきちんと交渉し、フリーランスなど受注する側は言いにくければ公正取引委員会に相談してほしい」と呼びかけています。
KADOKAWA「法令順守を徹底」
「KADOKAWA」はホームページで、「勧告に直接関わるすべてのかたがたをはじめとする、多くの関係者に多大なるご迷惑をおかけする事態となり、深くおわび申し上げます」とするコメントを出しました。
そのうえで、「新たな発注単価が確定しだい速やかに2023年4月発売号までさかのぼって差額に相当する金額をお支払いいたします。KADOKAWAグループは勧告を真摯(しんし)に受け止め、勧告の内容を役員や従業員に周知徹底するとともに改めて下請け法に関する社内研修の実施などを通じてさらなるコンプライアンスの強化と再発防止に取り組み、法令順守を徹底してまいります」としています。
フリーランス保護の新法施行 公取が対応強化
フリーランスで働く人を保護する新たな法律が今月1日、施行され、業務を委託した事業者に対して、報酬の減額の禁止などが義務づけられ、公正取引委員会は対応を強化しています。
新しい法律では、業務を委託した企業などの事業者に対して書面などで報酬額や支払い期日などの取引条件を直ちに明示するよう求めているほか、業務委託の期間が1か月以上の場合は、通常よりも報酬を著しく低くする「買いたたき」やあらかじめ定めた報酬の減額などを禁止しています。
公正取引委員会は、法律違反があった場合、事業者に是正を求める勧告や命令を出すことができ、是正を求める命令に違反した場合は、「50万円以下の罰金」を科すとしています。
また、勧告や命令を出した際には、違反の内容とともに事業者名を公表する方針も示していて、フリーランス保護の対応を強化しています。
今回、「KADOKAWA」などが下請け法違反と認定された「買いたたき」は、新法でも違反に当たりますが法律の施行前の行為であり、下請け法が適用されたということです。
このほか、公正取引委員会は、先月、アニメやCGのキャラクターを使って動画を配信する「Vチューバー」の事業を行う都内の会社が、フリーランスを中心とした下請け業者に対し、キャラクターの動きの作成などのやり直しを無償でさせていたとして、下請け法違反を認定し、代金の支払いや再発防止を求める勧告を行っています。
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