インドの首都ニューデリーで2024年9月下旬、インド人を主なターゲットに日本アニメを楽しんでもらうイベントが開かれた。駐在員ら在留邦人有志が手弁当で企画・運営し、日印両政府が公認した。アニメを入り口に日本を売り込むだけでなく、将来的なビジネスチャンスも視野に入れた「オールジャパン」の取り組みだ。(共同通信ニューデリー支局 岩橋拓郎)
「進撃の巨人」の巨大な顔のオブジェ前で写真を撮ったり、新海誠監督の「秒速5センチメートル」ヒンディー語吹き替え版や「すずめの戸締まり」を鑑賞したり。ショッピングモール内の特設会場は催しを満喫するインド人でぎっしり埋まった。アニメ関連のほか、日系企業の商品展示ブースや日本食店も軒を連ねた。
名称は「メラ!メラ!アニメ・ジャパン!!」。ヒンディー語で「メラ」は祭りや縁日の意味。メラメラという火が燃える音もイメージし、ブームが燃え上がってほしいとの希望を込めた。
実行委員会の滝俊介さん(45)によると、中心メンバーは約10人。さまざまな業種の駐在員や大使館員らが集まった。駐在員同士で「日系企業が元気を出せることをしたい」と議論したことが発端。半年近くスポンサー開拓など準備に奔走し、初開催にこぎつけた。
米市場調査会社によると、インドのアニメ市場の規模は2023年の16億4200万ドル(約2530億円)から2032年には50億ドルを上回ると予測される。動画配信サービスで作品を視聴しやすくなったことやソーシャルメディアによる話題拡散が背景にある。
実行委の山中崇之さん(47)は「アニメに出てくる弁当箱内の『おにぎり』って何という疑問や、ドラえもんが食べているものを食べたいという気持ちが日本への関心の芽になる」と話す。
別の狙いもある。海賊版対策だ。アジアでは著作権意識が低い国もあり、偽物のグッズや模倣品がよく出回る。山中さんは「どうしたら本物を本物の値段で買ってもらえるか。偽物のTシャツを着ていたらかっこわるいという価値観が根付いてほしい」と期待する。
会場を訪れた大学2年アナンド・シンさん(19)は、日本のアニメをきっかけに四季折々の風景を実際に見てみたくなり、2023年7月から独学で日本語を学び始めた。「漢字は難しいけど、アニメや漫画を楽しむために頑張る」と意気込む。
コスプレショーや書道体験には人だかりができ、週末の2日間で来場者は約5万人に上った。滝さんは「日本というブランドがさらに広まった」と手応えを感じた様子。2025年も開催したい考えだ。
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