ベトナム戦争で米軍が空から密林などに散布した枯れ葉剤の影響から結合双生児として生まれたグエン・ドクさん(43)の半生と家族の絆を描いたドキュメンタリー映画「ドクちゃん ―フジとサクラにつなぐ愛―」が3日から、東京都内などで上映される。公開に先立ち来日したドクさんは「私の映画を通じて平和の大切さを考えてほしい」と話した。(野呂法夫)

日本赤十字看護大学であいさつするグエン・ドクさん(右)と川畑耕平監督=東京都渋谷区で

◆後遺症と闘いながら働き暮らす

映画「ドクちゃん -フジとサクラにつなぐ愛―」の一場面(©2024 Kingyo Films Pte. Ltd.)

 弟のドクさんと兄のベトさんは1981年、下半身が結合した状態で生まれ「ベトちゃん、ドクちゃん」と知られた。当時、枯れ葉剤に使われた猛毒のダイオキシン類を魚などから親が摂取した影響とみられる子どもの被害が相次いだ。  88年、2人の分離手術はホーチミン市のツーズー病院で成功したが、2007年にベトさんは死亡。ドクさんは同病院の事務に就き、トゥエンさんと結婚した。09年、双子が生まれ、ベトナム語で息子に富士、娘には桜と名付けた。自宅で義母を介護し、自身も後遺症と闘いながら、一家の稼ぎ手として働いて暮らしている。

◆日本とは手術などで深い縁

映画「ドクちゃん -フジとサクラにつなぐ愛―」の一場面(©2024 Kingyo Films Pte. Ltd.)

 川畑耕平監督は22年12月から、ドクさん一家の日常生活に密着してカメラを回した。映画では、父親としてたくましく生きる姿や家族のだんらん、実の両親から十分な愛情を受けずに育った葛藤のほか、ベトナムでは今も障害児が生まれる深刻さも描く。  4月11日、東京・広尾の日本赤十字看護大学ホールで試写会があり、登壇したドクさんは「日本は第二の古里。日赤に無事に再び戻って来られてうれしい」と感激していた。  ドクさんと日赤の関係は深い。38年前の1986年6月、ベトさんの急性脳症で初来日し、日赤医療センターで手術が行われた。母国での分離手術でも、日赤の全面支援を受けた。  試写会に来場した看護学生には「患者さんはそれぞれ困難を抱えて病院に来るので、大切に扱い、本当に喜んでいただける看護師さんになれるよう努力して」と、医療現場の先輩としてアドバイスをした。

◆「私の真実の姿を見てほしい」

映画「ドクちゃん -フジとサクラにつなぐ愛―」の一場面(©2024 Kingyo Films Pte. Ltd.)

 映画については「私の真実の姿を見てほしい。未来をつなぐ皆さんが平和の大切さを訴えて、二度と戦争を起こさない世界を広めてほしい」と呼びかけた。  川畑監督は「ドクさんが生きているのは医療や看護の方々の力があってこそ。皆さんも他の国の方々への医療を考えていただけたら次のドクさんが助かると思います」と語った。  3日から新宿ピカデリー、MOVIX昭島・柏の葉・さいたまの各館などで公開される。 

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。