私立中学校の生徒が不登校になる「重大事態」が起きていたか調べていた滋賀県いじめ再調査委員会が30日、調査報告書を公表した。報告書は、いじめ防止対策推進法(いじめ防止法)に基づく重大事態として、いじめを4件認定。学校や県の対応の問題を指摘した。

 報告書によると、2021年5月ごろから12月ごろの間、当時中学1年の生徒は、同じクラスの同級生から、アニメの名前になぞらえて呼ばれ、容姿に点数を付けて呼ばれるなどした。生徒は1年生の12月から卒業までの約2年4カ月間、登校できなかった。22年10月には心的外傷後ストレス障害(PTSD)の診断を受けた。

 再調査委は、同級生4人からの行為4件をいじめと認定。学校の対応について「何度もいじめ事案として認知し対応する機会があったが、学校長をはじめ、一貫して人間関係のトラブルという捉え方がなされていた」と指摘し、学校の対応は不適切だったとした。

 県の対応についても「学校に対して早くから強く指導、助言を行っていく必要があった」と結論づけた。

 この問題は異例の経緯をたどった。21年12月に保護者からいじめ被害の申し立てがあったが、学校が設置したいじめ対策委員会は「いじめは認知しない」といったん結論づけた。

 いじめ防止法では、いじめで年間30日の欠席を余儀なくされた疑いがある場合、学校などは調査すると定めており、22年1月には欠席が年間30日に達した。保護者から申し入れを受け、学校は23年2月に特別調査委員会を設置。しかし、文部科学省の定めるガイドラインに該当しないメンバーがいたため、同年6月に同委員会は解散。7月に職能団体などの推薦で選任されたメンバーによる第三者委員会が設置された。

 並行して三日月大造知事は23年9月、「学校の調査が遅れている」として、県いじめ再調査委員会を立ち上げた。県いじめ再調査委員会は今年1月までに、生徒や保護者、教職員らから計9回延べ40人から聞き取りをした。一方、学校が設置した第三者委は調査の継続が難しいとして、昨年11月に解散していた。

 30日に報告書を受け取った三日月知事は「いじめの芽が起きた時に早く学校や社会が対応できるように、教訓を今後の施策に生かしていきたい」と話した。春日井敏之委員長(立命館大学名誉教授)は「3年の月日がいたずらに経ってしまった。いじめ防止法にのっとり初期段階からきちんと対応されておらず子どもたちに負荷がかかった。何よりも教訓を生かしてもらいたい」と話した。(林利香)

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