起訴を取り消された「大川原化工機」(横浜市)をめぐる捜査で逮捕・起訴された同社顧問の相嶋静夫さん(当時72)が死亡したのは、勾留先の東京拘置所の医師が適切な対処を怠ったからだとして、遺族らが国に賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(木納敏和裁判長)は6日、遺族らの訴えを認めなかった一審・東京地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。

 相嶋さんは2020年3月、軍事転用可能な機器を無許可で輸出したとして、外国為替及び外国貿易法違反容疑で同社社長らとともに逮捕された。勾留中の同年10月に胃がんと判明し、外部の病院に入院したが、21年2月に亡くなった。

 遺族側は訴訟で、20年7月にあった血液検査で貧血の数値が出た時や、翌月に胃痛を訴えた時に拘置所側が適切な対処をせず、がんを早期に発見できなかったと訴えた。

 一審判決は、血液検査以外の他の検査では異常がなく、経過観察としたのは「医学的合理性がある」と指摘。胃痛についても、薬を処方した上で経過観察としたのは「一般的な医療措置」で、不適切ではないと判断した。遺族側は、判決を不服として控訴していた。

 同社への捜査をめぐっては、東京地裁が昨年12月、警視庁公安部の逮捕や地検の起訴を違法と認め、東京都と国に計約1億6千万円の賠償を命じた。原告と被告の双方が控訴し、東京高裁で審理が続いており、12月25日に結審する予定だ。(米田優人)

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