離婚後の親権などを判断する家庭裁判所について、国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は10月29日の勧告で、裁判官らがジェンダーに基づく暴力を十分理解、考慮するよう求めた。これを受け、虐待やDV問題に取り組む弁護士らが1日、東京都内で会見し、「国は勧告を受け止め、司法の分野でジェンダー研修を推進して」と訴えた。(出田阿生)

◆「このまま共同親権になれば、加害者の嫌がらせが続く」

 委員会は今回の勧告で、父親の虐待が疑われたり、DVで保護命令が出されたりするようなケースでも、「家裁は親子の面会を優先させている懸念がある」と指摘。「子どもと、DVを受けている母親の両方の安全を損なう可能性がある」とした上で、家裁の裁判官と調査官が子どもの親権や親子の面会を決定する際に「ジェンダーに基づく暴力を十分考慮するよう、能力開発を強化・拡大すること」を求めた。

会見する石井弁護士(中)ら=東京都千代田区の厚生労働省で

 1日に会見した「DV虐待を許さない弁護士と当事者の会」の弁護士らは先月、スイス・ジュネーブで開かれた委員会の審査に参加。2026年に離婚後共同親権制度が導入されることで「虐待やDV被害の当事者が、より過酷な状態になる」と委員に訴えてきた。こうした訴えが、勧告に反映された形となった。  石井真紀子弁護士は会見で「現状でも家裁にDVや虐待を見抜く能力が不足し、適切な判断ができていない。このまま共同親権になれば、制度を悪用した加害者の嫌がらせが続くと、委員に伝えた」と説明。「共同親権が不適切なケースでは、容易に単独親権に変えられることが重要。国は司法予算を増やし、法科大学院や司法研修所をはじめ、研修を進めてほしい」と話した。 

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