10月下旬、産婦人科医がSNSに投稿した内容です。
10日ほどでリポストが600件を超えていて「小学生でも治療できるんだ」などの反応があったということです。
投稿したのは、東京・渋谷区のレディースクリニックで院長を務める産婦人科医の稲葉可奈子さんです。
ことし7月にオープンしたクリニックには、生理痛に悩む小学生が遠方からも多く診察に訪れているといいます。
その中で、生理痛で来院した小学生から、以前に婦人科での診察ができなかったことがあったと聞きました。
ある小学生の母親は、近所の婦人科に受診できるか何件も問い合わせましたが「うちでは小学生は診ていません」と言われ、インターネットなどで調べて稲葉さんのクリニックを見つけたということです。
産婦人科医 稲葉可奈子さん
「『小学生は婦人科で診てもらえないんだ』と思って受診をとどまっている人が日本全国にもいるんじゃないか。私が投稿して発信することで『受診してもいい』と気づく人がいるんじゃないかなと思いました」
中学受験を控えて受診
稲葉さんによりますと、小学生が受診するきっかけとして一番多いのは、中学受験を控えていて受験の日に生理になってしまうのはつらいので避けたいというケースです。
ほかにもすでに初潮を迎えていて学校を休むほど生理痛が重いため、相談にくるケースもあるということです。
このクリニックでは、小学生も積極的に受け入れていてホームページには小学生も診察できることや診察する内容などをわかりやすく記載し、子どもが受診しやすい環境作りを工夫しています。
取材に訪れた日も、小学6年生の女の子が初めて診察に訪れていました。
生理が始まり経血の量が多く、中学受験を年明けに控え受験日の生理を避けたいことなどから来院したということです。
小学6年生の女の子の母親
「娘も最初はとても緊張していました。親としても、いきなり内診はないという点に安心できたし『受験生の生理相談外来』という枠があるので予約もしやすかったです。初めての受診でしたがこれから毎月、生理がくることへの不安などを解消できて本当に安心しました」
産婦人科医 稲葉可奈子さん
「しんどい思いをしている方に、治療できるという選択肢があることを知ってもらうことが一番大事です。少しでもしんどいとか、周りからみてしんどそうだと思ったら婦人科で相談してもらいたい」
婦人科?小児科?どこで診察を受ければいい?
生理痛のある小学生は、婦人科や小児科などどこで診察を受ければいいのか、学会などによる明確な指針はないため、保護者自身が選ぶ必要があり、対応のしかたについてもそれぞれの医師に委ねられています。
日本小児内分泌学会の菊池透理事は、婦人科でも子どもの診療に慣れていない医師は、リスクを考慮して、断るケースもあるのではないかとしています。
日本産婦人科医会のホームページによりますと、思春期の女の子の生理痛の診療にあたっては、生理の状況や痛みの程度を問診で聞き取り、超音波検査などをした上で保護者の意見を聞きながら治療方法を検討します。
症状によって鎮痛薬や低用量ピルの処方も検討されるということです。
一方で、子どもに処方した際の体への影響についてはデータも少なく、ピルの処方には慎重な意見もあるということです。
「娘に申し訳なかった」中学生の母親は
愛知県に住む、中学2年生の娘がいる母親によりますと、娘は、小学5年生の時に初めて生理がきましたが、起きていられないほどの強い痛みでしばしば学校を休まなければなかったといいます。
小学校の養護教諭の勧めもあり、近くの婦人科に電話で問い合わせましたが「小学生は診られないので小児科に行ってほしい」と受診できなかったということです。
そして「小児科に行っても痛み止めをもらえるくらいだと思ったし、娘も大丈夫だと言うので小児科には行かなかった」として、市販の痛み止めで対応したといいます。
その後、娘は中学校に進学しますが、依然として生理痛がひどく、毎月、学校を休んでいました。
しかし、ことしに入って、養護教諭から「進学に影響が出るからなるべく欠席しないほうがいい」と言われたことなどから、母親は娘と相談した上で婦人科を受診させることにしました。
中学2年生の女の子の母親
「当時は、子どもは婦人科で診てもらえないと思い込んでいたので、娘に申し訳なかったと思っています。薬を飲むようになって娘も痛みに苦しまずに生活できるようになったので、もっと早く受診できるところを見つけて連れて行けばよかったです」
「婦人科ちょっと怖かったけど…」
また、小学生のころから生理前の体調不良に悩まされていた東京・江東区の中学1年生の女の子は、当初、婦人科の受診に不安を感じていたといいます。
女の子は、小学5年生のときに生理が始まってから毎月、生理前に頭痛やけん怠感に悩まされていました。
当時、母親には相談できましたが、学校の先生や友達には相談しにくかったといいます。
中学校の受験を控え、試験日の生理を避けたいことから、母親に勧められて父親の知り合いの婦人科医の病院を受診しました。
中学1年生の女の子
「受診したときは、もともと婦人科というものをよく知らなかったので、ちょっと怖かったです。病院の先生と話してみると行きにくさはなくなりました」
女の子の母親
「昔と今では生理用品などをはじめ、色々なものが変わってきていると思います。私たち親世代よりもっと快適に 生理の期間を過ごせるのに、私たちがそれを知らないばっかりに教えてあげられないということもあるので、こうしたらもっと快適になるなどの情報を知ることができる場所があるといいなと思います」と話していました。
治療や対処のポイント 医師が説明
小学生が生理痛を我慢しないためにはどうすればいいのか?
治療や対処のポイントを女性医療ネットワーク理事の宋美玄医師に聞きました。
-小学生が婦人科を受診できないケースがあったといいます
最近になって、薬の種類が増えたり、治療法がアップデートされたりして、診てくれる病院も出てきましたが、やっぱり「小学生は診られません」というところが多いのが現状だと思います。
特に地域によっては、診てくれるところがないということも結構あると聞いています。
大人でも生理痛をピルで治療しようという意識が高まってきたのはここ数年です。
-子どもの生理は重いの?
小学生のころの方が子宮がまだ未熟で小さいので、生理の血を押し出すのに痛みを感じやすいと言われています。
症状はかなり個人差があって、1回目の生理からすごく重いという子もたくさんいます。子どもだから軽いだろうと思わないことが大事です。
-生理痛の治療 子どもと大人で違いは?
年代によって処方する薬に差はありますが、生理が重いという方には、排卵したり、着床のために子宮内膜を作ったりといった、妊娠の準備自体をお休みさせるという治療法を行うので、初めて生理が来てから閉経までその基本的な考え方は一緒です。
-生理痛の診察はどんなもの?
少なくとも私の病院では、小学生が生理痛で受診した際、下着を脱いで内診をすることは、まずありません。
怖いことはしません。
お話を伺ったり、おなかの上から診察したりするだけなので、ぜひ怖がらずに受診してほしいです。
-小学生が生理痛を我慢しないために必要なことは?
長い間、女性は生理を我慢するものだと思われていましたが、今の時代、治療の選択肢がいっぱいあるので、我慢せず受診していただいて、どういった治療の選択肢があるかだけでも知っていただけたらと思います。
地域の小学校や中学校、養護学級の先生、保健室の先生が、地域の産婦人科と連携することで困っている小学生が病院に行きやすくなるのではないかなと思います。
-家庭でできる対処法は?
親に生理の悩みを話せないお子さんもたくさんいますので、まずは親子で生理のことをタブー視せず、話すことが大切だと思います。
痛みが強いときには、市販の痛み止めを我慢せずに飲んでほしいですし、おなかを温めたりとか、お風呂にゆっくりつかったりとか、楽な姿勢で体を締めつけないないとか、少し体をいたわるだけでも、楽になるかなと思います。
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