広島市の安佐動物公園は8月、絶滅の恐れのあるゾウの一種で、国内の動物園に2頭しかいない「マルミミゾウ」について、国内初の妊娠を確認した。
新たな命を宿したのは推定25歳の「メイ」で、出産は来年8~10月を予定だ。園の職員は国内で前例のない出産に備えて慎重に様子を見守り、園には母ゾウの姿を一目見ようと多くの人が訪れている。(共同通信=小林ひな乃)
ある9月の午後、飼育場のメイは水しぶきや砂を体にかけつつ、木陰で暑さをしのいでいた。周囲にはそんなメイに手を振る子ども連れや写真撮影するカップルの姿があった。
メイの妊娠をテレビなどで知り、来園した人も。長男と祖母の3人で訪れた広島市の教員溝上絵梨さん(37)は「息子と『メイちゃん、頑張ってね』と声をかけた。おなかが大きくなったころにまた様子を見に来たい」と心を躍らせる。
メイは推定2歳の時に西アフリカのブルキナファソから2001年に来園した。
2022年からはメイの発情時期に合わせて、山口県秋吉台の動物園から借り入れた雄の「ダイ」と3カ月ごとに2頭での同居を実施。職員の思いとは裏腹に、メイがダイに興味を示し、同じ空間で過ごすようになるまで時間はかかったが、今年8月14日のエコー検査などで妊娠を確認した。
20年以上メイの世話を続ける飼育技師佐々木直行さん(51)にとって、飼育や健康管理を同じ空間で触れながら行う「直接飼育」で育てたメイは娘のような存在だ。「ずっと見てきた子が母親になるとは。母子ともに無事に生まれて、子育てしてくれたらうれしい」と話す。
佐々木さんは国内でマルミミゾウの出産例がないため、アジアゾウやアフリカゾウの出産を経験した動物園と情報を共有するなど試行錯誤を重ねる。母ゾウが育児放棄する場合も想定し、ゾウ用の人工乳について調べるなど万全の備えを進め、無事の出産を願っている。
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