「福岡はうまくいっているから、将来への危機意識が低い」。建築家でまちづくりNPO理事長の松岡恭子さん(60)は、再開発促進事業「天神ビッグバン」などで高層ビルが相次いで建設され、急速に姿を変える福岡市の街づくりの先行きを懸念している。(共同通信=田井誠)
生まれも育ちも福岡市。1987年に九州大工学部建築学科を卒業し、米コロンビア大大学院などで学んだ後、米国や台湾で建築家としてのキャリアを積み、国内外で建築設計に携わった。
海外を含め都市開発をつぶさに見てきた松岡さんは、新型コロナウイルス禍の前から「建物が新しく大きくなれば、人が来るとは限らない」と指摘してきた。リモートワークやネット販売が拡大する中、福岡の街が人を引きつけ続けるには、文化や芸術など都市ならではの魅力づくりが大切と考える。
コロナ禍の2020年から2022年にかけて毎秋、人通りが少なくなった福岡市中心部でホテルロビーや空き店舗などを借り、九州各地の陶磁器や地場産品を展示する社会実験に取り組んだ。「都市が持つべき文化的な公共空間を可視化した」と、実験の意義を強調する。
福岡は他の都市と比べ、中長期の人口減少率が低い。「恵まれた都市である一方、九州一円から人口を吸い上げてきた福岡市は、九州の未来に対して大きな責任がある」と語った。
家業を継ぎ、2016年に地場大手不動産会社「大央」社長に就任したが、経営の傍ら、街づくりに関するNPO法人「福岡建築ファウンデーション」理事長として、市内の建築探訪ツアーや講演会、展覧会開催に携わっている。変貌しつつある福岡の街並みをきちんとした形で次世代に引き継ぎたいとの思いからだ。
「解決困難な社会課題が山積する現代、都市開発には地元の英知を集めて考え抜くことが肝要」と訴えた。
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