最高裁裁判官の国民審査の結果が28日公表され、審査対象となった6人全員が信任された。ただ罷免を求める投票(×印)の割合は6人全体でみると10%を超えるなど約30年ぶりの高水準となった。
総務省が公表した速報資料によると今回は約5572万の投票があり、投票率は前回比2.05ポイント減の53.64%だった。
裁判官別で罷免を求める割合(不信任率)が最も高かったのは最高裁長官の今崎幸彦氏の11.46%。尾島明氏(11.00%)や宮川美津子氏(10.51%)、石兼公博氏(10.00%)の3人も10%以上だった。平木正洋氏と中村慎氏は9%台後半だった。
不信任の割合が10%を超える裁判官は2000年の国民審査を最後に出ていなかった。
6人全体では10.46%と前回の21年審査の6.78%から大幅に上昇した。全体の不信任率は近年6〜9%台で推移しており、10%を超えるのは1990年審査(11.62%)以来、34年ぶりだ。
国民審査は憲法79条で規定されている。最高裁裁判官に就任してから最初の衆院選と、その後は10年が経過した後の選挙ごとに審査対象になる。
有権者は辞めさせたい裁判官に「×」を書き、信任する場合には何も記入しない。1949年に初めて行われ今回で26回目だが、対象となった延べ196人の裁判官で罷免された例はない。
有権者が最高裁裁判官の適否を直接投票で決める制度は、世界的にも珍しいとされる。「司法権の独立」を守るため身分保障が手厚い裁判官に対し、三権分立の観点から国民に罷免権を与える趣旨とされる。
ただ、今回の審査対象のうち就任から1年以上たっていたのは今崎氏と尾島氏の2人のみだ。関与した裁判例などの判断材料が国民に十分与えられていないなどの課題は長年指摘されてきた。過去には在任中に衆院選がなく審査を一度も受けずに定年退官した例もあり、審査の実効性を疑問視する声も上がっている。
国民審査に詳しい明治大の西川伸一教授は今回の不信任率の高さについてSNSなどで自ら材料を集め、積極的に投票した有権者が増えた結果ではないかと分析。「全体的に高い不信任率が出たことで、裁判官も一層『国民にみられている』と感じるようになり、有権者にとっても審査の意義を確認する機会になったはずだ」と話す。
一方、投票率が前回を下回ったことにも触れ、「まずは衆院選への投票率の向上が前提にはなるが、国民の意見をより広く反映する上でも、国民審査ももう一つの柱として周知していくことが求められる」としている。
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