設置が認められたのは、IT大手のドワンゴと公益財団法人の日本財団が計画を進めていた通信制大学、「ZEN大学(仮称)」です。

文部科学省の「大学設置・学校法人審議会」で29日、設置を認める答申が出され、来年4月に開設されることになりました。

計画によりますと、学部は「知能情報社会学部」の1つで、「情報」や「デジタル産業」など6つの分野について事前に収録された授業などをすべてインターネットで受講できるとしています。

また、1学年の入学定員は3500人で、通信制の大学としては放送大学の1万5000人に次ぐ異例の規模となっています。

ドワンゴは、これまでに沖縄県などに通信制の高校を開校しているほか、中学生向けの教育機関で通信制の学校運営に携わっています。

一方で29日の答申では付帯事項として通信制の大学としては定員規模が大きいことなどから、安定的に学生の確保ができない場合、影響が特に大きいとして戦略的な募集活動を行うことや学生への適切なサポート体制の整備、それに財務計画や定員について実態に応じて適切に見直すよう求めています。

大学 ”住む地域や収入の格差なく 教育を提供”

設置を認める答申が出されたことについて、ZEN大学(仮称)は、時間や場所の制約のないオンラインの強みを生かして、住む地域や収入などで格差が生じない教育を提供していきたいとしていて「指摘いただいた内容は真摯(しんし)に受け止め、来年の開設に向けてよりよい体制作りに努めていきたい。これまで大学への進学の機会がなかった人にも選んでもらえるような大学を目指したい」としています。

通信制大学に通う学生 コロナ禍をきっかけに増加

文部科学省によりますと、通信制の大学の数は去年は、全国に45か所あり、平成22年の調査時点の44か所からほぼ変わっていません。

一方で、通信制に通う学生の数は減少傾向が続いていましたがコロナ禍を機に増加に転じ、去年はおよそ18万5000人で、3年前の2020年から2万人余り増えています。

大学などに通う18歳人口が減少 私立大学の経営は

少子化の影響で大学などに進学する18歳人口が減少する中、私立大学の経営は厳しい状況にさらされています。

文部科学省によりますと、18歳人口は、1992年は205万人でしたが、去年は110万人とほぼ半減しています。

また、文部科学省の外郭団体「日本私立学校振興・共済事業団」が私立大学や短大を対象に行った今年度の調査では、全国598の大学のうちおよそ6割の354校が学生数が定員に達しない、定員割れとなっています。

専門家「多様な学びを受け入れる1つの選択肢に」

大規模な通信制大学が新たに開設されることについて、オンライン教育に詳しい熊本大学の鈴木克明名誉教授は「従来の通信制の大学は働きながら学ぶ人など幅広い年齢層をターゲットにしていたが、高校の時代から『通信制』という学びの形態を選んでいる人たちが増えている。大学レベルにおいても通信制の大学へのニーズにつながってきているのではないかと思う」と指摘しています。

そして「従来の通学制の大学よりも学生をサポートする体制や仕組み作りが求められる」とした上で「選択の幅が広がるのは大変意義深いことだ。さまざまな学習スタイルがあるなかで、多様な学びを受け入れる1つの選択肢になってほしい」としています。

また、定員割れに直面するほかの私立大学への影響について「学生にとって学びの選択肢が増えることはいいことだが、学生集めに苦労している大学にとっては相当な脅威になる可能性がある。今回の動きが大学がみずからの優位性を再考する契機になるのではないか」と話しています。

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