1986年に福井市で中学3年の女子生徒=当時(15)=が殺害された事件で、殺人罪が確定し服役した前川彰司さん(59)の再審開始を認めた名古屋高裁金沢支部決定について、検察当局は28日、異議申し立てをしないと発表した。逮捕から37年を経て再審開始が確定し、再審公判が開かれる見通し。無罪となる公算が大きい。

名古屋高検は異議を申し立てない理由について「決定書の内容を子細に検討し、証拠関係を総合的に考慮した結果」と説明した。

弁護団は「あまりに遅きに失した決断ではあるが、再審公判が開かれることになった。前川さんが一日も早く無罪判決を得ることができるよう、引き続き全力を尽くす」とのコメントを出した。

前川さんは事件への関与を一貫して否定していた。一審福井地裁判決は無罪だったが、二審名古屋高裁金沢支部判決で懲役7年の逆転有罪となり、97年に最高裁で確定。服役後の第1次再審請求審で同支部が再審開始を決定したが、検察側の異議申し立てを受けて名古屋高裁が取り消した。2022年に起こした第2次請求審で今月23日、同支部が2度目の再審開始を決定した。

23日の決定は「捜査に行き詰まった捜査機関が誘導などの不当な働き掛けを行い、関係者の供述が形成された疑いが払拭できない」などと指摘。警察に迎合した可能性がある関係者供述の信用性を認めることは「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則にもとり、正義に反し許されないとした。

殺人事件での再審開始が確定したのは、静岡一家4人殺害事件で死刑が確定した袴田巌さん(88)以来。袴田さんは今年9月、静岡地裁の再審公判で無罪が言い渡され、10月に確定した。

再審開始が確定し、笑顔を見せる前川彰司さん=28日午後、福井市

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