福井市で1986年に起きた女子中学生殺害事件の第2次再審請求で、殺人罪で服役した前川彰司さん(59)の再審が開かれることが確定した。再審開始を認めた23日の名古屋高裁金沢支部決定に対し、名古屋高検は28日、異議申し立てをしないと明らかにした。

 高検の畑中良彦・次席検事は理由について「決定書の内容を子細に検討し、証拠関係を総合的に考慮した結果。異議の申し立てはしないと判断した」と述べた。

 決定で高裁支部は、検察側が新たに証拠開示した捜査書類などから、有罪判決の根拠となった知人らの目撃証言に疑いが生じたと指摘。もともと物証がない「脆弱(ぜいじゃく)な証拠構造」にあって、これらの証拠は再審開始に必要な「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠に当たる」と認めた。

 さらに高裁支部は、警察が証言をした知人に結婚祝いを贈るなどしていたことや、検察が証言と矛盾する客観証拠を一審から隠してきたことにも言及。「公正であるべき警察官の職務に対する国民の信頼を裏切る」「公益を代表する検察官としてあるまじき、不誠実で罪深い不正の所為」などと批判していた。

 前川さんは福井市の市営住宅で中学3年の女子生徒(当時15)を包丁で刺すなどして殺害したとして、87年に逮捕・起訴された。福井地裁は無罪としたが、高裁支部は有罪としたうえで心神耗弱を認めて懲役7年とし、97年に最高裁で確定した。第1次再審請求で高裁支部は2011年に再審開始を認めたが、後に取り消され、前川さんは22年に第2次請求をしていた。(椎木慎太郎)

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