茨城県の筑波山地域で産出する「筑波山塊の花崗(かこう)岩」が、国際地質科学連合(IUGS)から、世界の「ヘリテージストーン(天然石材遺産)」に認定されました。ヘリテージストーンは人類との関わりが深く、国際的な価値が高いことなどが条件で、世界では55件が認定されています。筑波山塊の花崗岩は東アジアで初めて選ばれました。  筑波山塊は、日本百名山の一つ筑波山をふくむ標高900メートル未満の山々で構成されます。花崗岩は筑波山塊の主要部を構成する岩石で、約6千万年前のマグマ活動でできた深成岩です。産地にちなんで「真壁石」(桜川市)、「稲田石」(笠間市)などと呼ばれています。  花崗岩の産地は、「筑波山地域ジオパーク」のエリアに含まれています。つくば市ジオパーク室によると、筑波山塊では花崗岩の巨石や奇岩が露出しているところは、山岳信仰の場として地域の人々に大切に守られてきたといいます。鎌倉時代に高度な石材加工技術が伝わると、石仏や五輪塔などの石造物が盛んにつくられるようになりました。桜川市真壁町周辺で作られている「真壁石灯籠」は日本の伝統的工芸品に指定されています。

真壁石が使われている迎賓館赤坂離宮=東京都港区で

 明治以降、地質調査が進むと良質な石材としての価値が認められるようになり、鉄道網の整備に伴って東京方面へ石材が運ばれるようになりました。国宝の迎賓館赤坂離宮や日本銀行、法務省旧本館(中央合同庁舎6号館赤れんが棟)、最高裁判所などの石造建築物のほか、東京駅前の敷石、国指定重要文化財の日本橋などに使われています。

日本橋には、真壁石や稲田石が用いられている=東京都中央区で(いずれもつくば市提供)

 認定の申請作業を担ったつくば市ジオパーク室の杉原薫専門員は「この地域の足元をつくっている花崗岩が、世界に誇れる石だということをアピールし、ジオパークの知名度向上や環境の保全を図っていきたい。地域の石材産業では後継者不足などの課題がある。受け継がれてきた石材加工の技術継承にもつなげていければ」と話しています。  IUGSは、ヘリテージストーンとは別に、世界の「地質遺産100選」を選定しました。2022年に続き2回目で、日本からは雲仙・普賢岳の平成新山溶岩ドーム(長崎県)と、喜界島(鹿児島県)が新たに採択されました。前回は、阪神大震災を引き起こした野島断層(兵庫県)と、「玄武岩」の名前の由来になった玄武洞(兵庫県)が選ばれています。 (榊原智康)


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