弁護士の北川健太郎被告(65)は、大阪地検のトップの検事正を務めていた2018年9月、大阪市内の公務員の宿舎で、酒に酔って抵抗できない状態の部下の女性に性的暴行をした罪に問われています。
25日、大阪地方裁判所で開かれた初公判で、北川被告は「争うことはしません」と述べ、起訴された内容を認めました。
そのうえで「被害者に深刻な被害を与えたことを深く反省し、謝罪したい」と述べました。
続いて、検察は冒頭陳述で「事件当日、被告は検事正の就任祝いに参加していて、泥酔した被害者をタクシーに押し込んで宿舎に連れていき、帰らせてほしいと訴える被害者に性的暴行を加えた。やめるよう伝えたのに、『これでお前も俺の女だ』と言って犯行を繰り返した」と主張しました。
ことしになって被害を訴えた経緯については「被害者は、検察にとって大事な人を辞めさせたら大変なことになると考え、明らかにすることができなかった。被告に話しても、『警察に突き出してください』と謝罪のことばを述べたものの、『時効が来るまで食事をごちそうする』などと軽々しく思っているような発言があり、2019年10月に被告が辞職する時期が決まった際には『表沙汰になれば大阪地検が立ちゆかなくなる』と口止めをされた。フラッシュバックに苦しみ、ことし2月にPTSDの診断を受けて働くことができなくなり、被害の申告をした」などと説明しました。
被害者の女性検察官が会見「尊厳を踏みにじられた」
初公判のあと、被害者の女性検察官と代理人の弁護士が大阪市内で記者会見を開きました。
この中で、女性は「私は現職の検事です」と述べたうえで、初公判を終えたことについて「被告が公訴事実を認めたので、このタイミングでお話ししようと決めました。被害を受けてからおよそ6年間、ずっと苦しんできました。なぜもっと早く罪を認めてくれなかったのか。認めてくれていたら、もっと早く被害を申告でき、この経験を過去のものとして捉えることができ、また新しい人生を踏み出すことができました。被告が罪を認めたとしても、私の処罰感情が弱まることはありません」と述べました。
女性は「検察組織や検察職員を人質にして、口止めをして、公にしたら死ぬと言われ、私は被害申告ができなかった。口止めされたことを含めて、6年間がぐるぐる回りながら、裁判の冒頭陳述や証拠調べの説明を聞いていました」と話しました。
会見を開いた理由については「性犯罪や虐待被害など、声を上げられずに苦しんでいる被害者がたくさんいる。私は若い頃、電車内で強制わいせつの被害に遭ったことがあるが、警察には届けられなかった。ストーカーの被害についてはまともに捜査してもらえず、声を上げても届かないことを身をもって感じてきた。力になりたいと思い、検事に任官した。たくさんの被害者とともに泣き、戦い、寄り添ってきた。私自身の経験を話すことで、被害者に寄り添うことができればと思い、会見を開いた」と話しました。
また「会見を開いたのは私自身のためでもある。法令を順守し、被害者に寄り添い、犯罪者を適正に処罰することを使命とする、検察の検事正から被害を受け、すべてを壊された。女性として、妻として、母としての私の尊厳、検事としての尊厳を踏みにじられた」と話しました。
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