能登半島地震と記録的豪雨で大きな被害を受けた石川県輪島市町野町に、自宅が全壊したにもかかわらず、ボランティア活動に熱心な小学2年生がいる。町野小の本谷日々生(もとや・ひびき)さん(8)。被災した家屋で泥をかき出したり、別のボランティアにコーヒーを提供したり。「みんなが喜んでくれることがうれしい」。小さな助っ人は、きょうも大忙しだ。(岩本雅子)

休憩中のボランティアに手作りの菓子を配る本谷日々生さん(右手前)=いずれも石川県輪島市町野町で

◆コーヒーや自分で焼いたクッキーを振る舞い

 8月から暮らす仮設住宅を自転車で出発し、倒壊家屋や流木が片付かないままの町並みを走り抜ける。行き先は町野小前にある屋根付きのバス停だ。毎週日曜に無料でコーヒーを提供する「バス停カフェ」で、日々生さんはボランティア仲間とともにコーヒーを提供したり、自ら焼いたクッキーなどを配ったりしている。「日々生、ちょっと手伝って」。その言葉にすぐ応じる姿に、大人たちが「よく働くね」とねぎらいの言葉を掛けた。  ボランティアに励むきっかけは4月。母の未央さん(48)が地元で炊き出しを手伝うのを見て、いつの間にか配膳や整理券の配布を担当。その後、バス停カフェでコーヒーを入れるようになった。

◆金沢に避難中は、週末に輪島へ戻って活動

 地震で自宅が全壊。学校の再開時期が見通せなかった2月、家族全員で金沢市のみなし仮設住宅に移った。その後、平日は金沢の学校に通い、週末は町野町に戻ってボランティアを続けた。未央さんは「(日々生さんは)町野では自由に元気に過ごしていた。いろんな人と接して、新しいことを吸収しているのかも」と成長を感じている。

バス停でコーヒーを入れる本谷日々生さん(左)

 夏休みに入り、仮設住宅への入居に合わせて町野で暮らすようになった。だが生活が落ち着いてきた9月21日、記録的な豪雨に襲われた。日々生さんは雨が落ち着いた22日夕からは、泥水が押し寄せた「バス停カフェ」の会場だったバス停で泥出しを手伝い、休校中は被災した家屋の片付けも手伝うようになった。

◆自分は「家族と友達がいれば十分」

 兵庫県からボランティアに来ている西野憲一さん(77)は、小さな助っ人の活躍が忘れられない。10月上旬、床にこびりついた泥をぞうきんでふいていたところ、日々生さんがヘラで泥を削り取り始めた。このアイデアに「感心した大人がまねをして、作業がはかどった」と西野さん。日々生さんは「カピカピの泥が取れそうと思って。自分で考えた」と胸を張る。  学校との両立について、日々生さんは「疲れるけど、ボランティアを続けたい」ときっぱりと言う。「(災害で)景色が変わっても、家族と友達がいれば十分。ボランティアをやっていると、みんなに喜んでもらえる。だから自分のできることをやりたいんだ」 

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