再逮捕されたのは、東京・台東区の元会社役員 細谷健一容疑者(43)と妻の細谷志保容疑者(38)です。

2人は有害な化学物質「エチレングリコール」を摂取させ、去年3月に次女の美輝ちゃん(4)を、6年前の2018年4月に健一容疑者の姉の細谷美奈子さん(41)を、それぞれ殺害したとして逮捕され、東京地検は先月、美奈子さんを殺害した罪で起訴していました。

警視庁によりますと、美奈子さんが亡くなった2018年には健一容疑者の両親も相次いで死亡していますが、その後の捜査で、このうち父親の勇さん(73)について、医療機関に残されていた血液検査のデータや、容疑者夫婦のスマートフォンの解析などから同じように化学物質を摂取させて殺害した疑いがあることがわかったということです。

当時、健一容疑者は勇さんが経営する会社で従業員として働いていましたが、経理を担当していた姉の美奈子さんが死亡し、勇さんも体調が悪化したことから会社を引き継いでいました。

警視庁は、会社の経営権や相続をめぐって親族間のトラブルがあったとみて調べるとともに、同じ年に亡くなった母親の八惠子さん(68)についても死亡した状況に不審な点があるとして、関連を捜査することにしています。

これまでの経緯

事件が発覚したのは、去年3月でした。

次女で4歳だった美輝ちゃんが死亡し、体内から車の不凍液に含まれる有害な化学物質「エチレングリコール」や抗精神病薬「オランザピン」の成分が検出されたことから、警視庁は、去年8月に健一容疑者と志保容疑者の夫婦の自宅を捜索。

ことし2月、夫婦が何らかの方法で「エチレングリコール」などを美輝ちゃんに故意に摂取させて殺害したとして殺人の疑いで逮捕しました。

夫婦の親族をめぐっては、6年前の2018年に健一容疑者の両親や姉が相次いで亡くなっていましたが、その後の捜査で、姉の細谷美奈子さん(当時41)の保存されていた臓器から「エチレングリコール」の代謝物が検出されたことなどから警視庁はことし3月、夫婦が飲食物に混ぜて摂取させ、殺害したとして再逮捕しました。

これまでの捜査では、父親の会社の経営権をめぐり、美奈子さんとの間にトラブルがあったことがわかっています。

東京地方検察庁は、当時の刑事責任能力を調べるための「鑑定留置」を裁判所に請求し、およそ半年間、専門家による精神鑑定が行われました。

その結果、東京地検は、刑事責任を問えると判断したものとみられ、先月、美奈子さんを殺害した罪で起訴していました。

父親の知人「跡取りとして目をかけていた」

父親の勇さんと30年以上、仕事での取り引きがあったという知人の男性は、勇さんが体調を崩し、入退院を繰り返していた時期の様子について、「たまたま会社に行って、ばったり会った時、『入院してばかりで経理ができないので、少しやりに来たんだ。これが終われば、また病院に戻らなくてはいけない』と話していた。病気については詳しく聞かなかったが、特別な部屋で治療していると聞いていた」などと話しました。

勇さんや家族が相次いで亡くなったことについて、「立て続けで大変だなと、当時、噂になっていた。1年間で3人も亡くなるなんて何かに取りつかれているのかと当時思っていた」と語りました。

勇さんと健一容疑者の親子関係については、「健一容疑者が会社にいたとき、勇さんに誰?社員の若い子?と聞いたら、息子だよと紹介された。勇さんは健一容疑者を“2代目”として営業先にも紹介するなど、跡取りとして目をかけていたと思う。健一容疑者もあれだけ大きな会社の2代目だから、やる気になっていたと思う」と話しました。

父親の友人「元気で活発だった人が衰弱し、驚いた」

父親の勇さんとは長年の友人で、息子の健一容疑者とも面識があったという男性は、勇さんと健一容疑者の親子関係について、「最初はそれほど仲が悪いわけでもなく、普通の親子だと思っていたが、健一容疑者が遊び倒して、勇さんが『金を使いすぎだ』といって勘当したという話は聞いた。勇さんが亡くなった時の健一容疑者は“普通の喪主”といった感じで、お葬式の時も、うちが経営しているホテルに泊まっていって下さいなどと声をかけてもらった」と話しました。

死亡する直前の勇さんの様子については、「亡くなる1週間か10日ほど前にお見舞い行ったが、元気で活発だった人が衰弱し、私のことを認識するのがやっとという状態だったので驚いた。一家の家族3人が次々と亡くなるのはどうしてだろうと、当時から思っていた」と語りました。

親族 “「勇さんは血液の病気だと」と聞いていた”

父親の勇さんが東京都内の病院に入院していた当時、見舞いに行ったという親族の女性は、当時、「勇さんは血液の病気だと」と聞いていたということです。

妻の八惠子さん、次女の美奈子さん、そして勇さんが、近い時期に立て続けに亡くなったことから、「当時、不思議に感じていた」と語りました。

勇さんの人柄については、「働き者で、1人で家を建てるなど負けず嫌いな部分もあった」と振り返る一方、息子の健一容疑者については、「幼稚園ぐらいのころには、びっくりするぐらい口が達者な子で、『おばさん、ご苦労さまです、気をつけて帰ってください』などとあいさつしていた。それ以降は会うことがなく、勇さんの葬式の時も、あいさつはしたが、特に会話はしなかった」などと話しました。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。