日本弁護士連合会の渕上玲子会長が24日、岡山県瀬戸内市の離島、長島にあるハンセン病国立療養所の「邑久光明園」と「長島愛生園」を訪問した。入所者からハンセン病問題の課題解決へ向けた取り組みの要請を受けた。岡山弁護士会によると、日弁連会長が長島を訪問するのは初めてという。
日弁連執行部らとともに光明園を訪れた渕上会長は、まず納骨堂で献花。同園の入所者自治会長で、全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)の屋猛司会長(82)らと意見交換の場に臨んだ。屋会長からは日弁連に対し、国への働きかけなどを求める要請書が渡された。
要請書を読み上げた屋会長は、全国で13ある国立療養所の入所者は680人(9月末時点)で平均年齢は88.4歳に達していると説明し、「高齢化が急速に進行している」と述べた。
その上で、全国の療養所の将来構想が築かれていないと懸念を示し、「国はどのような形で最後の1人まで必要な措置を講じようとしているかが定まっておらず、大きな不安を抱いている」と打ち明けた。
さらに人権教育の場として療養所を保存管理していく「永続化」についても、その形や維持管理の方針も定まっていないと指摘。入所者の人権を守る役割で療養所に設置された「人権擁護委員会」に関しても、「成熟していないものもある」などと苦言を呈した。
渕上会長は意見交換の後、報道陣に「過去の人権侵害、今も続く偏見差別を解消するための取り組みのマンパワーが足りていないという指摘を受けた。基本的人権の擁護を実現する団体として、活動をしっかりしていかなければいけない」と述べた。
渕上会長らはその後、長島愛生園でも入所者らと面会。園などの世界遺産登録を目指す動きがあり、それに向けた取り組みなどの説明を受けた。
入所者自治会の石田雅男事務局長(88)は園で78年生活してきたと話し、園の先行きが入所者の関心事になっていると明かした。「生きてきた証である愛生園が何らかの形で残り、見て考えてもらえるものとして存在したらいいと思っている」と訴えた。(北村浩貴)
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